2018年2月14日水曜日

脳の生態学(Fuchs 2018)序文

研究アーカイブに下記のレジュメを加えておきました。

Fuchs, T. (2018). Ecology of the brain: The phenomenology and biology of the embodied mind. Oxford, UK: Oxford University Press.(序文のみ)

3ページの短い序文をさらに要約したものではありますが、本書の立場が比較的明瞭に書かれているように思います。脳は生命体に備わる一器官であり、器官として身体全体と関係し、身体-環境の相互作用を媒介し、自己-他者の相互作用を媒介する、「媒介する器官(mediating organ)」であることが端的に示されています。

ひとつ注目できるのは「feeling of being alive」と彼が述べている点でしょうか。意識の作用は脳から生み出されるものではなく、生命が宿る有機体としての身体に、最初から「生きている感じ」として備わっている、という仮説的な見通しを述べています。

この「生きているという感じ」、あえて脳との対応づけを考えると、おそらく島皮質の作用と相関しているように思います。感覚とも感情とも呼べるかもしれないが、そのどちらでもないような、全身に広がる漠然とした「感じ(feeling)」。離人症では島の機能が低下しているという報告がありますが、生きている感じがしないという当事者の言葉に対応しているように思います。

この本、3月終わりぐらいからオンライン読書会形式で読んでいく予定です。ご希望の方は田中までお問い合わせください。