2020年4月4日土曜日

新たな助成

これまで、当サイトおよびエンボディードアプローチ研究会は以下の公的資金の助成を受けて運営されてきました。

2015~2019年度,科研費・基盤研究(B)「Embodied Human Scienceの構想と展開」

2019年度で助成期間が終了しましたが、このたび、新たに以下の助成を受けることが内定しました。ここに記して感謝申し上げます。

・2020年度〜2023年度(予定),科研費・基盤研究(B)「身体化された自己:ミニマルからナラティヴへ」

前年度までは「Embodied Human Science(身体性人間科学)」を構想してきました。中心に据えてきたのは、いわゆるミニマル・セルフの問題です。不必要な要素をすべて取り払ってもなお残る自己とは何か。これを身体性の観点から明らかにしました。また、その延長で、身体行為にもとづいて自己と他者がどのように相互理解を発展させるのか、記述することを試みました。

今年度からは、ミニマル・セルフからナラティヴ・セルフ(物語的自己)に少しずつ研究の焦点を移していく予定です。身体行為にもとづく自己は、身体レベルで経験した出来事をどのようにものがたり、さらにその物語にもとづく自己アイデンティティを構築していくのか。こうした問題意識にもとづいて今後の研究を展開していきます。

今後も引き続き、当サイトおよびエンボディードアプローチ研究会をよろしくお願い致します。 
 

 

2020年3月27日金曜日

間身体性療法が奏功した症例?

友人から来たメールの件名が「間身体性療法が奏功した症例」となっていて、何のことだろうと思って本文を読んでみたら私のことが書いてありました。いわく、若い頃と違って私の笑顔が歪んでいないんだそうです。この写真のことです。

間身体性、ご存知の通りメルロ゠ポンティの概念です。自己の身体と他者の身体のあいだには潜在的に通じ合う関係があって、それはあくびの伝染や笑顔の連鎖のように、同調する身体表現として顕在化します。メールを送ってきた友人によると、若い頃の私は屈託のない笑顔を浮かべることがなく、いつも微妙に歪んでいたとのこと。もちろん、本人的にはそんな自覚はまったくなかったのですが。心外なこと甚だしい(笑

それはともかく、間身体性はコミュニケーション場面でもきわめて重要な要因を果たしています。新型コロナウィルスの感染拡大に応じてテレワークが盛んになりつつありますが、オフィスワークには身体性を共有できる良さと、それに由来する固有の意義があります。おそらく、テレワークが発達すればするほど、テレワークだから実現できることと、オフィスワークだから実現できること、両方の意味が別々に自覚されるようになるだろうと思います。

以下は、そんなことを考えるうえで参考にしていただけるであろうインタビュー記事です。


今回は、オフィスデザインを事業としている「フロンティアコンサルティング」社によるインタビューでした。インタビューはそれこそスカイプではなく私の研究室で同じ空間を共有しながら行ったものです。ウイルスの感染拡大が問題になる前の1月上旬に実施できたのは今思うと幸いでした。

わりと分かりやすい記事にまとめてくださっていると思います。身体性、空間デザイン、オフィス空間に関心のある方々ご覧いただければ幸いです。

 

2020年3月14日土曜日

雑誌『体育の科学』に寄稿しました

昨年9月に久々に体育学会のシンポジウムに登壇する機会があったのですが、そのときにお話しした内容をもとに執筆した原稿が『体育の科学』に掲載されました。

体育の科学70巻3月号:特集「eスポーツを考える」(杏林書院)

特集には、当日シンポジウムでご一緒した秋吉遼子氏(東海大学)、佐藤晋太郎氏(早稲田大学)も寄稿されています。お二人ともわりと網羅的に論点をおさえているので、eスポーツに全般的に関心のある人には参考になる紙面構成になっていると思います。

私の寄稿分は以下のような構成です。

田中彰吾「身体性哲学からみたeスポーツ」
 1. eスポーツと他のスポーツとの共通点
 2. eスポーツに固有の特徴
  1) 身体図式の利用方法
  2) 仮想空間への適応
 3. スポーツの身体的経験と情報技術

もともとeスポーツの専門家ではないのでたいした内容は書けていないのですが、体育哲学的な論考としては日本では今のところあまり例がない考察になっているかと思います。

ちなみに、「eスポーツはスポーツじゃない」という主張は世間でもよく聞かれるところですが、それはeスポーツを考えるさいの問題ではありません。本当の問題は、情報技術の急速な進化とともに、ひとの身体経験そのものが劇的に変化しつつあることです。eスポーツを考えることは、情報化された未来の身体について考えることでもあります。今回の原稿では最後に少し触れただけですが、いずれこのことの意味を、VR技術やBMIなどとも合わせて、じっくり考えてみたいと思っています。
 




3.11から9年

早いもので東日本大震災から9年たちました。昨今コロナウイルスの関係で年度末・年度はじめの対応に追われているのですが、その慌ただしさが9年前と似ているせいで、改めて当時を思い出すことが多いです。

ウイルスとは直接関係ないのですが、先日震災関連で取材を1件お受けしました。かつてこんな論文を発表していたのですが、その内容について問い合わせがあったためです。

田中彰吾(2015)「復興のランドスケープ-東日本大震災後の防潮堤建設を再考する」『文明』第20号,81-90ページ

当時も今も東海大の文明研究所の所員を兼務しているのですが、当時は震災復興の研究プロジェクトに従事していて、心理学や身体論から貢献できるテーマとしてランドスケープ論を取り上げたのでした。とくに当時は巨大防潮堤建設が始まりつつあったので、主としてその問題を批判的に取り上げました。

当時気仙沼や陸前高田まで行って現地を歩いてみて感じましたが、この防潮堤建設は東北のランドスケープを一変させてしまうに違いないと予感しました。どうやら、その予感は本当になりつつあるようです。以下の記事を読んでいただけるとよくわかるかと思います。残念ながら読者限定記事なので会員でない方はアクセスできないようですが…。

読売新聞(2020年3月5日朝刊)
[震災9年]復興のゴールは<上>かさ上げ移転 薄らぐ絆
[震災9年]復興のゴールは<中>避難先に愛着 鈍る帰還
[震災9年]復興のゴールは<下>住民の輪で街づくり

田中のコメントは<上>に部分的に掲載されています。「復興後の街に共通するのは、現実感のなさだ」「人と風景がうまくつながっている感じがしない。人々のなりわいや暮らしになじむ街づくりを行う視点はあったか」というコメントを紹介していただきました。

ただ、防潮堤はじめ復興のあり方に批判的なことをいう前に、あの震災で命を落とされた方々につつしんで哀悼の意を表したく思います。私の拙い論文もその思いをもとに書いたものです。
 

 

2020年2月27日木曜日

レジュメ追加 (他者のような自己自身)

2019年度秋学期の大学院ゼミでポール・リクール 『他者のような自己自身』を読み始めました。リクール 、考えていることは面白いのですが、文体と思考がまわりくどく遅々として進んでいかないので、読むのに骨が折れます。途中から大学の同僚でフッサール研究者の村田憲郎先生が加わってくれて、一緒に議論しながら読み進めることで、だいぶ深く読み込めるようになってきました。

研究アーカイブのページにここまでのレジュメをアップしてあります。
序言
第3研究
第4研究

ちなみに、村田先生と私のペアで現象学を学べる環境は、なかなか得難いかもしれません。現象学、エナクティヴィズム、ナラティヴ論など、リクールに触発されていつも議論が広がっていきます。メンバーが増えていくとかなり面白い議論の場になっていきそうです。次の学期も時間を取って続ける予定ですので、関心のある方は遊びにきてください。
 
た 


2020年2月25日火曜日

エンボディードアプローチ研究会 (3/25 東海大学)

新型コロナウィルスの関係で開催できるかどうか微妙ですが、来月25日に研究会を予定しています。オランダから社会心理学の若手研究者トム・フラインス(Tom Frijns)さんが来日されるので、それに合わせてエンボディードアプローチ研究会を開くことにしました。状況によって彼の来日が中止になれば、研究会も中止にせざるを得ないだろうと思います。

以下、ご案内です。無事に開催できるとよいのですが、どうなることやら…。
  
----------------
第9回エンボディードアプローチ研究会

第9回のエンボディードアプローチ研究会は、トム・フラインス氏(ユトレヒト大学講師・社会心理学)をゲストにお招きして実施します。テーマはシンクロニーです。二人以上のひとが集まって会話をはじめとする社会的相互作用を行うとき、そこでは、さまざまな同期が生じています。同期は、非言語行動のような身体的レベルのものから、脳活動の同期のように神経生理学的レベルのものまで、多元的に生じています。午前の部では、嶋田総太郎氏(明治大学・認知神経科学)のご講演を含め、シンクロニーについて概括的なレクチャーを行います。午後の部では、フラインス氏によるレクチャー+ワークショップを行います。

日時:2020年3月25日(水),10:30-17:00
場所:東海大学湘南キャンパス,19号館3階・307教室

プログラム
10:30-11:30
 Shogo Tanaka (Tokai University) 田中彰吾(東海大学)
 “Intercorporeality and social understanding”
11:30-12:30
 Sotaro Shimada (Meiji University) 嶋田総太郎(明治大学)
 “Inter-brain synchronization in social interaction”
12:30-14:00 LUNCH
14:00-15:30
 Tom Frijns (Utrecht University)
 Tom Frijns & Tom Sloetjes (Utrecht University)
 トム・フラインス&トム・スローティエス(ユトレヒト大学)
 “Active synchrony as a means of enhancing students’ willingness and ability to work together” 
 (combined presentation and workshop)
15:30-16:00 COFFEE
16:00-17:00
 Discussion:全体討論
 
問合せ先:田中彰吾(東海大学 body_of_knowledge@yahoo.co.jp)
----------------

 

2020年2月13日木曜日

電子書籍化『身体の知』

2015年に紙版で刊行された以下の書籍が電子化されたそうです。紙版3960円に比べてキンドルは2500円なのでけっこうお買い得かも。
 
田中も1章寄稿しています。
田中彰吾「心身問題と他者問題-湯浅泰雄が考え残したこと」(pp. 134-154)

湯浅先生は心身問題を他者問題と適切に関連させて考えることをしていなかったと思います。そのため、湯浅先生の他者論は、現在の「心の理論」が陥っているのと同じような理論的問題を含んでいます。この点を考え直すには「間身体性」を考える必要がありますよ、というのが拙論で指摘したことです。心身論と他者論どちらにも関心のある人向けの論考になっております。
 
 

2020年2月5日水曜日

研究会案内 (2/20 東海大学)

2019年度から本格的に始まった身体性リハビリテーション研究会ですが、次回は2月20日(木)に開催します。

第3回身体性リハビリテーション研究会
2020年2月20日(木) 14:00〜17:00
東海大学湘南キャンパスにて

密な議論を優先する形式でやっていますので、現状ではまだクローズドな方式で開催しています。基本的には、中枢神経系の各種の疾患にともなう運動障害を扱っている理学療法士さんたちが集まって議論することで、リハビリテーションの現場で遭遇する運動障害について、現象学的な理解を深めようという目標で開催しています。ご関心のあるセラピストさんはお問い合わせください。

ちなみに、ただいまリハビリテーション方面の専門家に向けて、ある出版社が企画する共著ものの企画にかかわっています。ようやく原稿を三分の二ぐらい書き終えたところです。順調に進めば今年刊行されるでしょう。
 

 
*2020/2/19 追記
新型コロナウイルスに関連する状況の変化を受けて、第3回研究会の開催は当面延期することになりました。新たな日程については、今後の状況の推移を見ながら関係者のあいだで調整します。

2020年1月18日土曜日

出そうで出ない

今さらで恐縮ですが、明けましておめでとうございます。新年のご挨拶がたいへん遅くなりました。年末年始は、雑誌や共著や単著の原稿もろもろを3万字ぐらい書いて、その他の仕事の資料を読んだらあっという間に終わってしまいました。それが終わったら今度は大学のエンドレスな業務が始まってしまい、ブログの更新が滞っておりました。

ブログを更新していなかったのはもう一つ理由があります。共著で関わっていたとある書籍が1月には刊行されそうな話を聞いていたので、それを記事にすればいいかと思っていたのですが、刊行が延期になったようです。この本です。
 
Olga Louchakova-Schwartz (Ed.) The Problem of Religious Experience: Case Studies in Phenomenology, with Reflections and Commentaries. Springer.
  
https://www.amazon.co.jp/Problem-Religious-Experience-Phenomenology-Contributions/dp/3030215741/ref=pd_rhf_gw_p_img_7?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=RMN3Q2Q6K6FYHVRN7CEW

英文のブログではずいぶん前に「もうすぐ出ます」的な紹介をしました。そちらの記事が昨年の8月29日付で、当初予定では昨年11月に刊行される予定だったのです。田中は第2章を寄稿しました。自然発生的な宗教的経験において身体性が果たしている役割について書いています。

Shogo Tanaka "Reconnecting the Self to the Divine: The Body’s Role in Religious Experience"

上のリンクでアマゾンのページを見てもらうとわかりますが、現状では3月刊行に延期されています。ここまで何度か情報が更新されるたびに刊行が1ヶ月ずつずれていく感じできていたので、11月→12月→1月で打ち止めになって念頭には出版されているだろうと見込んでおり、それを新年の記事にしようと思っていたのですが、あてが外れました。

何が起こっているのやら。編者のOlgaさんからは延期の旨の簡単なメールしか来ていないので、よくわかりません。私が初稿を送ってからもう3年になります。いっそのこと、このまま出版されずに終わって「幻の名著」になってくれればそのほうがいいかもしれません(笑

それで、申し遅れましたが、今年もよろしくお願いします。本ブログも4年目になりました。記事の本数は相変わらず少ないですが、意外に続いているので、自分でも驚いている次第です。今年は、大学での事務作業の合間に更新できる技を身につけたいと思っています。今年はイベントの多い一年になるので、発信量は増えるかと思います。
 

 
 
2020/01/31:追記
今日編者のOlgaさんからメールがあって、無事に刊行されたそうです。アマゾンのページをチェックしたら1/29発売に表記が変更されていました。



2019年12月27日金曜日

人間科学研究会

2021年7月に東京で開催されるInternational Human Science Research Conference(人間科学研究国際会議)の準備のため、以下の通り研究会を開催しました。

人間科学研究会
日時:2019年12月25日(水),13:30-18:00
会場:大田区産業プラザ(PiO)  https://www.pio-ota.net/

報告者
01) 田中彰吾(東海大学)「IHSRC 2021に向けて」
02) 渡辺恒夫(東邦大学)「過去のIHSRCでの報告内容」
03) セビリア・アントン(九州大学)「教育倫理学の質的研究」
04) 河野哲也(立教大学)「2021年大会での企画」
05) 奥井遼(同志社大学)「わざの現象学に向けて-IHSRCでの体験」
06) 玉井健(高知リハビリテーション専門職大学)
07) 村井尚子(京都女子大学)「教師の専門性と教育的タクト」
08) 佐々木英和(宇都宮大学)「会話型社会と手紙型社会」
09) 植田嘉好子(川崎医療福祉大学)「対人支援領域における現象学的研究」
10) 北谷幸寛(富山大学)「研究紹介(安楽に関する研究)」
11) 吉田章宏(東京大学)「A record of Akihiro Yoshida's participation in IHSRC」


---------------

以上、事後報告ですが、研究会の開催記録としてここに掲載しておきます。(なお、手元のメモに沿って記録したので、発表タイトルが必ずしも正確ではない場合があります。タイトル情報の修正をご希望の先生は随時情報をお寄せいただけると助かります)
 
今回は、IHSRCに参加経験のある方々中心にお声がけをして、参加者は全員発表するという形式で実施しました。第1回の準備会合としては大変有意義な交流の場になったと思います。
 
東京大会に向けて、学会でのシンポジウム企画等も含めて、今後も準備イベントをいろいろと開催する予定です。関心のある皆さまは、ぜひ2021年IHSRC東京大会にご参加ください。今後も関連情報をこのブログでも発信していきます。