2018年2月21日水曜日

国際シンポ特設ページ

来月、2018年3月24日〜25日に国際シンポジウムを開催します。

2018年3月24日(土) 09:30-17:30
2018年3月25日(日) 10:00-18:00
東京大学駒場1キャンパス・2号館3階・308教室

ページを切り替えると特設ページに進めるほか、上記リンクをクリックしても同じページに進めるようになっています。
 
前にシンポジウムでイスラエルを訪問したことを記事に書きましたが、そのさいにいろいろと議論を共有した若手研究者にヨハイ・アタリアさん(テル=ハイ・カレッジ上級講師 / オープン大学研究員)という方がいます。今回のシンポジウムはアタリアさんと議論を進めるうちに共同でオーガナイズすることになったものです。
 
そこまで議論が深まるきっかけを提供してくれたのは、哲学者ショーン・ギャラガー氏の仕事です。ギャラガー氏は身体性と自己の関連について、所有感(sense of ownership)と主体感(sense of agency)という二つの概念で整理しています。アタリアさんも田中も、彼のこの仕事から影響を受けて仕事をしているので、イスラエルを訪れたさいにかなり深く議論を共有したのでした。
 
準備を進めるうちにこれはギャラガー氏本人にも出て欲しいよね、という話になってご本人に出演を依頼してみたところ、ご快諾いただきました。超多忙な方のため来日はかなわず、今回はオンライン出演ですが、25日の朝10時から基調講演で登壇される予定です。「Reimagining the body image」(身体イメージを再度イメージする)というタイトルをいただいています。どんな講演になるのか楽しみです。
 
ぜひ、発表メンバーとタイトルを特設ページでご覧ください。神経科学の議論から哲学的な議論まで、身体性をめぐって経験科学と哲学が対話するプログラムになっているのがおわかりいただけるかと思います。ギャラガー氏の著作のように、科学と哲学が対話することで新しい議論が生まれて来る場所になることと思います。ご期待ください。
 
講演はすべて英語なのでハードルが高いと感じる方も多いかもしれませんが、そういう方は将来の英語での発表準備の学習にご活用ください(笑)。どなたでも参加できます。費用は無料です。
 
以下のページからオンラインで参加登録ができます(人数把握のため事前にご登録をお願いしています)。
参加登録:https://goo.gl/forms/650de8h9h0A7LgPe2 
  
皆さまのご来場をお待ちしています。
 

2018年2月15日木曜日

イベント案内

こういうご案内をいただきました。立教大学の河野先生からです。
画像を貼り付けておきます。
  
公開シンポジウムとB・アンドリュー講演会
「間とあいだの比較現象学」


2018年2月14日水曜日

脳の生態学(Fuchs, 2018)序文

研究アーカイブに下記のレジュメを加えておきました。

Fuchs, T. (2018). Ecology of the brain: The phenomenology and biology of the embodied mind. Oxford, UK: Oxford University Press.(序文のみ)

3ページの短い序文をさらに要約したものではありますが、本書の立場が比較的明瞭に書かれているように思います。脳は生命体に備わる一器官であり、器官として身体全体と関係し、身体-環境の相互作用を媒介し、自己-他者の相互作用を媒介する、「媒介する器官(mediating organ)」であることが端的に示されています。

ひとつ注目できるのは「feeling of being alive」と彼が述べている点でしょうか。意識の作用は脳から生み出されるものではなく、生命が宿る有機体としての身体に、最初から「生きている感じ」として備わっている、という仮説的な見通しを述べています。

この「生きているという感じ」、あえて脳との対応づけを考えると、おそらく島皮質の作用と相関しているように思います。感覚とも感情とも呼べるかもしれないが、そのどちらでもないような、全身に広がる漠然とした「感じ(feeling)」。離人症では島の機能が低下しているという報告がありますが、生きている感じがしないという当事者の言葉に対応しているように思います。

この本、3月終わりぐらいからオンライン読書会形式で読んでいく予定です。ご希望の方は田中までお問い合わせください。
 


2018年2月4日日曜日

戦利品♪

待ちに待った一冊が届きました。
Thomas Fuchs (2018). Ecology of the brain: The phenomenology and biology of the embodied mind. Oxford, UK: Oxford University Press.
(トーマス・フックス『脳の生態学-身体化された心の現象学と生物学』)
  
しばらく前からオンライン読書会を開きますとお伝えしていたのですが、原著が届かないので企画そのものが滞っていました。
 
以前も書きましたが、この本が重視しているのは、まさに脳のエコロジーであり、脳の生態学的な基盤です。脳が知覚や認知にとって重要な役割を果たしている器官であることは間違いありませんが、人が知覚・認知する世界をすべて脳内の表象に還元するような見方は、脳の持つ生態学的な位置づけを無視して脳の役割を過大視し過ぎています。そうではなくて、身体を含む有機体全体の一部とし脳を位置づけると、身体と環境の相互作用、自己の身体と他者の身体の相互作用、人々が共有する文化的世界へのアクセスなど、脳は、生命体としての人と世界とを「媒介する器官(mediating organ)」として重要な役割を果たしていることが理解できます。こういう基本的な見方についてきちんと哲学的な基礎づけを与えている点も本書の魅力ですが、現在の神経科学の知見への批判、さらに、その再解釈と位置づけ直しといったことに言及している点や、未来の心の科学のあり方への展望を拓いている点も、本書の魅力であろうと思われます。

読書会は来月くらいからゆるゆる動き出そうかと思います。

ところで、「戦利品」とタイトルに書いたのは意味があります。じつは、推薦文を書く仕事を頼まれたのですよ、とっても光栄なことに! 和書で言うと、帯に入れる推薦文を書くようなものです。洋書の場合は背表紙に何人かが推薦文を入れることが多いのですが、届いた現物を見るとこんな感じになっていました。
 

見えづらいですね。上から三つめが私の書いたものです。最初オックスフォード大学出版局の担当編集者の方から連絡をもらったときに「至急endorsementを書いてください」という依頼があったのですが、「え、endorsementって何? 手形の裏書? 手形を切った覚えはないけどな」なんてことしか頭に浮かばなかったのでした。背表紙に入れる推薦文なので「裏書」と呼ぶのですねぇ、知りませんでした。

それにしても、光栄な話です。裏書を寄せているのは4人いますが、「エナクティヴ・アプローチ」で有名なディ・パオロ、精神医学の哲学のマシュー・ラトクリフ、ミラーニューロンの研究で知られる神経科学のヴィットーリオ・ガレーゼ、というすごい面々に混じって、なぜか無名の私のような人間が入っています。いちおう「身体性認知」の分野からお情けで一人入れてもらった、って感じでしょうかね。

まあでも、私にとっては、オックスフォードから出る本に推薦文を寄稿したというのは、研究を実直に続けてきて勝ち取った戦利品、という感じで鼻高々な気分なのです。


 

2018年1月21日日曜日

朗報

1年前ごろにドイツで書いていた論文、もうすぐ刊行されることになりました。
タイトルは、

What is it like to be disconnected from the body?
(身体から切り離されているとはどのようなことか?)

です。
なかなか刺激的じゃないですか? 

もちろん、ネーゲルの論文「What is it like to be a bat?」(コウモリであるとはどのようなことか?)から借りたタイトルですが、意識の主観性の謎に迫っているわけではありません。離人症における身体経験の謎を追ったものです。

離人症ではしばしば「自己が身体から離れたところにいる」「観察する自己と行動する自己が分離しているように感じる」という体外離脱的な症状が当事者から語られるのですが、それはどのような経験なのか、現象学的に解明することを試みました。文脈が違いますが、同じように自己が身体から遊離する経験として語られる「フルボディ錯覚」を比較対象として検討した点で、前例がない論文になると思います。
 
掲載先は「Journal of Consciousness Studies」です。刊行は少し先で、春頃になるようです。ともあれ、無事に受理されてよかったです。帰国して約5ヶ月たちますが、ようやく在外研究に区切りがついた気分です。
 


2018年1月9日火曜日

CFP: Body Schema and Body Image

3月末(24-25日)に東京で国際シンポジウムを開催します。「身体図式と身体イメージ」をテーマとする二日間のイベントです。
 
ただいま、発表を募集中です。詳しくは、学術系SNS「Academia」で公開しているシンポジウムの趣旨文をご覧ください。
 
同じ情報は、別のSNS「Researchgate」でも公開しています。こちらはプロジェクト形式で登録してあるので、プロジェクトをフォローすると、随時お知らせが届きます。
 
直前になってしまって恐縮ですが、いちおう今月24日が発表申し込みの公式締切日です。
 
なお、学際系のイベントですので、発表内容の分野に制限はありません。神経科学、心理学、精神医学、認知科学、スポーツ科学、社会学、哲学など、いろいろな分野から参加していただけます。ご関心のある方は、上記CFPをぜひご一読ください。シンポジウムで議論の焦点になる論点をあるていど整理してあります。
 
発表したいけど締切に間に合わないかも…という方は、ご相談ください。応募状況によっては何とかなる可能性もあります。また、その他のご質問等がある場合も、遠慮なくお問い合わせください。
 

2018年1月3日水曜日

地味に1周年

あけましておめでとうございます。2018年ですね。

このサイトも開設から1年を超えたことになります。とくに時間的な展望を持たずに始めたページなので1年たったからといって感慨もとくにありません(笑 ここは学術系の情報をシェアするためのページなので、イベントの告知とか企画とか、関連する論文や書籍の紹介とか、といったことで重要なコンテンツを集約し発信できればそれでいいかなと。

ただ、もうちょっとマメにブログを更新したいと思いつつ、なかなか難しい状況が続いているのが残念です。昨年出版した拙著のその後のことや、いま進行中の訳書のことなどもいろいろ書きたいとは思いながら、何もできずにいます。ドイツに滞在していた頃は大学の仕事から解放されていたのでブログにもっと時間が取れたのですが(だからこのサイトを開設するのに必要な最初の時間が作れました)、8月末に帰国してから慢性的に時間不足に悩まされています。

もちろん、主な理由は大学での仕事です。授業だけで相当な長時間なのに加えて、いわゆる学務にいろいろと時間を取られるので、何かとままなりません。こんな状態で管理職の仕事がそのうち回ってきたりすると、目も当てられない状態になりそうです。研究を続けるために大学にいるのに、いまどきの大学では研究の時間はろくに取れません。研究はほとんど余暇の域に追いやられているようにさえ見えます。

まあ、そんなこんなでブログの更新は滞る場面が多そうですが、論文と書籍を執筆する時間だけは涼しい顔してきっちり確保したいと思っています。今年もよろしくお願いします。