2025年6月23日月曜日

インタラクションとイントラアクション

買ってから1年以上積読になっていたカレン・バラッド『宇宙の途上で出会う』を読みました。ニールス・ボーアの量子力学をめぐる思索を「エージェンシャル・リアリズム」という独自の哲学的立場に発展させた一冊です。分厚いですが、すごく読み応えのある本でした。

フェミニズムにも影響を受けている著者なので身体についてもっと言及があるかと思いきや、実際にはそうでもないところが個人的には物足りなかったです(最後の章に出てくるクモヒトデの例が多少は参考になりました)。晩年のメルロ゠ポンティが「肉」という概念で考えたかった存在論はエージェンシャル・リアリズムの立場にも近いように思われるので、肉と身体の関係を考えていけば、読後に物足りなかった点を自分自身で考えられるかな、などということをぼんやりと考えています。

他方、バラッドが「エージェンシー」という概念を生物から物質へと拡張しているのですが、このアイデアはエナクティビズムの拡張と親和性があるように思います。生物が行為を通じて自己と環境を差異化し、相互作用(インタラクション)を通じて環境を認知している様子は、宇宙が内部作用(イントラアクション)を通じて自己自身を差異化しつつ物質・時間・空間を構成し、自己自身を認知している様子とパラレルに理解できそうです。

ともあれ、読みながら考えたことを自分でも形にせねば、と思わせてくれる一冊でした。