2024年2月23日金曜日

対話空間のオラリティ (3/9 オンライン)

2019年から参加していた科研費プロジェクトの成果発表となるシンポジウムが開催されることになりました。

シンポジウム「対話空間のオラリティ:オープンダイアローグ、当事者研究、相互行為をめぐって」

JSPS科研費(19KT0001)「対人援助とセラピーにおける対話実践の身体性と社会性:対話空間のオラリティ研究」(研究代表:石原孝二)
本研究はオープンダイアローグ、当事者研究、ACT(包括型地域生活支援)の対話実践を比較しながら、それぞれの効果や特徴、伝達過程などを明らかにするとともに、身体的相互作用・同期や発話の交代プロセス、対話空間の構造・デザイン、対話実践の伝播を支える社会制度や社会的基盤のあり方を考察することを目的としています。音声言語を通じて実現される共在性(オラリティ)のあり方が、対話実践の参加者にどのような影響をあたえ、そうした実践が社会制度やコミュニティのあり方とどのような関係にあるのかを考えます。本研究の終了にあたり、総括シンポジウムを行います。

2024年3月9日(土)13時~17時15分 オンライン 参加費無料
13:00-14:30
石原孝二(東京大学)
斉藤環(筑波大学)
矢原隆行(熊本大学)
井庭崇(慶應義塾大学)
13:35-15:40
浦野茂(三重県立看護大学)
田中彰吾(東海大学)
北中淳子(慶應義塾大学)
15:45-16:50
糸川昌成(東京都医学総合研究所)
向谷地生良(北海道医療大学)
熊谷晋一郎(東京大学)
16:50-17:15 クロージング

Peatix上でイベントページが開設されております。

申し込みは必要ですが参加費は無料です。
どうぞご参加ください。

2024年2月17日土曜日

自己であることと科学すること

1月20日に開催した出版記念シンポジウム「自己の科学は可能か」での議論を通じて考えたことを記事にまとめました。事後報告ですみません、1月31日にすでに新曜社のWebマガジン「クラルス」で公開されております。
 
連載 『自己の科学は可能か』出版記念シンポジウムの現場から
 
何を書いたかというと、
・あらゆる経験に「自己」は随伴していること
・それゆえ、何らかの経験を科学することは「自己の科学」であること
・とはいえ、「経験」を反省によって取り出そうとすると変質すること
・その一方で、「経験」は主体のトップダウンの構えによっても影響を受けること
・以上の条件を考慮して、それでも「同じ経験」と言いうる経験を対象とすべきこと
といったことです。

上記のポイントは、著作そのものの中では紙幅の都合でうまく書けていなかったポイントでもありますし、当日の議論に後押しされて書けたところもありますので(特にタイトルは入來先生の当日の講演に触発されています)、上記リンクからお読みいただければ幸甚です。

第4回人間科学研究会 (3/2 オンライン)

IHSRC日本開催に連動して2019年から年1回のペースで開催してきた「人間科学研究会」ですが、このたび以下の日程で第4回研究会を開催することになりました。今回は、教育学分野から奥井遼先生(同志社大学)、社会福祉学分野から植田嘉好子先生(川崎医療福祉大学)にご講演いただきます。現象学と質的研究にご関心のある皆様、どうぞ奮ってご参加ください。

第4回人間科学研究会

日時:2024年3月2日(土)14:00〜17:15,オンライン

Zoom開催(参加希望の方は事務局の田中までお問い合わせください)

14:00〜15:30 講演1

「エキスパートの生きられた経験 ――糸操り現代人形劇の現場から」奥井遼(同志社大学)

要旨:本発表では、現代人形劇を事例として、「わざ」を身につけた人における生きられた経験を記述する。発表者はこれまで京都の小さな人形劇団において、稽古や公演の場に居合わせながら参与観察を重ねてきた。その中で、稽古をするたびに舞台運びがスムーズになっていく様子や、限られた舞台装置の中で表現スタイルを模索する姿などを目の当たりにして、わざを習得することに伴う知覚の変容や、優れたわざを身につけた人ならではのものの見方を知るに至った。それは必ずしもわざの獲得や上達という単線的で量的な拡張を意味するものではない。むしろ葛藤や矛盾も含めたダイナミックな経験の質の変化にほかならない。これらも含め、本発表ではわざを遂行している人たちについての「〈生きられた〉空間や時間や世界」の「報告書」を記すことを目指す。

15:45〜17:15 講演2

「“明けない夜はない”―救急医療ソーシャルワーカーの専門性確立への途(みち)」植田嘉好子(川崎医療福祉大学)

要旨:救急医療の現場では予告なしに生命の危機状態にある患者が運び込まれ,同時に,虐待や自殺,貧困,身寄りなし、オーバーステイ、ごみ屋敷等の社会的課題も顕在化する.今回取り上げるのはこれらに対応する救急認定ソーシャルワーカー(ESW:Emergency Social Worker)の認識である。病院内外でのさまざまな対立(医療職、患者、家族、行政、地域の他機関、制度政策)をどのように乗り越え、専門職としての地位を確立してきたのか。またそれは何を目指したものであったのか。時間の猶予がほとんどない中で行っているESWの洞察や推理,判断,根拠の確かめ,逡巡や葛藤,挑戦などの実践経験の意味を、熟練ESWらへのインタビューから現象学的に明らかにしていく。