IHSRC日本開催に連動して2019年から年1回のペースで開催してきた「人間科学研究会」ですが、このたび以下の日程で第4回研究会を開催することになりました。今回は、教育学分野から奥井遼先生(同志社大学)、社会福祉学分野から植田嘉好子先生(川崎医療福祉大学)にご講演いただきます。現象学と質的研究にご関心のある皆様、どうぞ奮ってご参加ください。
第4回人間科学研究会
日時:2024年3月2日(土)14:00〜17:15,オンライン
Zoom開催(参加希望の方は事務局の田中までお問い合わせください)
14:00〜15:30 講演1
「エキスパートの生きられた経験 ――糸操り現代人形劇の現場から」奥井遼(同志社大学)
要旨:本発表では、現代人形劇を事例として、「わざ」を身につけた人における生きられた経験を記述する。発表者はこれまで京都の小さな人形劇団において、稽古や公演の場に居合わせながら参与観察を重ねてきた。その中で、稽古をするたびに舞台運びがスムーズになっていく様子や、限られた舞台装置の中で表現スタイルを模索する姿などを目の当たりにして、わざを習得することに伴う知覚の変容や、優れたわざを身につけた人ならではのものの見方を知るに至った。それは必ずしもわざの獲得や上達という単線的で量的な拡張を意味するものではない。むしろ葛藤や矛盾も含めたダイナミックな経験の質の変化にほかならない。これらも含め、本発表ではわざを遂行している人たちについての「〈生きられた〉空間や時間や世界」の「報告書」を記すことを目指す。
15:45〜17:15 講演2
「“明けない夜はない”―救急医療ソーシャルワーカーの専門性確立への途(みち)」植田嘉好子(川崎医療福祉大学)
要旨:救急医療の現場では予告なしに生命の危機状態にある患者が運び込まれ,同時に,虐待や自殺,貧困,身寄りなし、オーバーステイ、ごみ屋敷等の社会的課題も顕在化する.今回取り上げるのはこれらに対応する救急認定ソーシャルワーカー(ESW:Emergency Social Worker)の認識である。病院内外でのさまざまな対立(医療職、患者、家族、行政、地域の他機関、制度政策)をどのように乗り越え、専門職としての地位を確立してきたのか。またそれは何を目指したものであったのか。時間の猶予がほとんどない中で行っているESWの洞察や推理,判断,根拠の確かめ,逡巡や葛藤,挑戦などの実践経験の意味を、熟練ESWらへのインタビューから現象学的に明らかにしていく。