2019年8月29日木曜日

現象学入門:発売から1年

宮原さんと翻訳したコイファー&チェメロ『現象学入門-新しい心の科学と哲学のために』(勁草書房・2018年)の刊行から1年がたちました。先日、担当の編集者だったDさんから売行きについてご連絡をいただきました。あまり細かい数字は書けませんが、刊行から1年で1100部ほど売れているそうです。

ご購入いただいたみなさま、ありがとうございます。入門書とはいえ、この手の哲学書は平均的には数年で2000部ぐらいしか売れないものなので、予想以上に多くの方に手に取っていただいたことを嬉しく思っています。

ちなみに、昨日・一昨日と著者の一人アントニー・チェメロさんに初めてお会いしました。立教大学で開かれた「Radical Embodied Cognition」というワークショップでご一緒したのですが、さすがに自分で訳したいと思った本の著者だけあって考え方も近く、意気投合する出会いでした。

そのとき彼から聞いたことの中には、本書のバージョンアップ情報も含まれていました。本書は英語版も評判が良かったらしく、共著者のコイファーさんと第二版を準備しているそうです。今までにあるようでなかったタイプの入門書で(例外はギャラガー&ザハヴィの『現象学的な心』ですが、こちらは入門書というほど読みやすくありませんでした)、心の科学の未来を開く視点で現象学を紹介しているので、わくわくしながら読んだ読者が多かったのではないでしょうか。

第二版、もちろん日本語に訳して紹介したいところではありますが、実現するにはこのまま順調に売れ続けてくれないと難しいのかもしれません。引き続き、みなさまのご声援をいただけると幸いです。


 

2019年8月24日土曜日

9月の予定(3):心理学会

その3。
今年も日本心理学会で現象学系のシンポを開きます。しかも今回は大会委員の森岡正芳先生のご尽力で大会準備委員会の企画シンポとして開催していただけることになりました。

日本心理学会第83回大会
立命館大学大阪いばらきキャンパス
2019年9月13日(金) 09:30-11:30 第三会場 AC130
シンポジウム「心理学と現象学-その関係の過去・現在・未来」
(企画)森岡正芳
(話題提供)森岡正芳(立命館大学)・渡辺恒夫(東邦大学)・田中彰吾(東海大学)
(指定討論)村上靖彦(大阪大学)・Jaan Valsiner(Aalborg University)

なんとも豪華なメンバーですね(私はともかく)。
こちらも公開企画なので、一般の方も来場できます。

ヴァルシナー先生とお会いするのは2年ぶりですが、このテーマでどんなことをコメントしてくれるのか、けっこう楽しみにしています。田中は現象学と近年の認知科学について、とくに身体性認知の問題を話すことになると思いますが、彼の立場である文化心理学との接点については以前から考え続けている論点なので、自分の考えを深めるいい機会になりそうです。

とはいえ、まずは一般の皆さま向けにわかりやすい話にしなくてはなりませんね。できるだけ予備知識なしでもわかる話にしたいと思っています。


 

9月の予定(2):体育学会

その2。
久々に日本体育学会におじゃまします。

日本体育学会第70回大会・公開シンポジウム
「テクノロジーの進化と体育・健康・スポーツ科学:eスポーツを題材に」
9月11日(水) 15:00-17:00 (慶応大学日吉キャンパス)
http://lib-arts.hc.keio.ac.jp/event/754

基調講演:Darlene A. Kluka(国際スポーツ体育協議会副会長)
「Technological evolution and physical education, health and sport sciences」

シンポジスト:
・佐藤晋太郎(早稲田大学)「eスポーツに関する研究動向と教育機関におけるプログラム化の現状」
・田中彰吾(東海大学)「身体性哲学からみるeスポーツ」
・秋吉遼子(東海大学)「eスポーツと体育・健康・スポーツ科学の接点とは」
 

お題は「eスポーツ」。今までちゃんと考えたことがないテーマではありますが、これを機に学んでみます。eスポーツといってもいろんなゲームがあるのでひとまとめにできない可能性もありますが、ビデオゲームに媒介された身体性に特有の論点はいくつかありそうにも思います。公開シンポで誰でも参加可能なようなので、ご関心のある方はぜひ。慶応大学日吉キャンパスにて。
 
 

 

9月の予定(1):認知科学会

来週のトークの準備もまだできていませんが、すでに決まっているその後の登壇予定をご紹介。その1。

日本認知科学会・第36回大会(静岡大学浜松キャンパス)
オーガナイズドセッション08「プロジェクションの理論とモデルへ向けて」
https://www.jcss.gr.jp/meetings/jcss2019/timetable.html#os6,8,9,10
9月7日(土)  12:45-15:15

オーガナイザー:嶋田総太郎(明治大学),久保南海子(愛知淑徳大学),川合伸幸(名古屋大学)

OS08-1 物語的自己とプロジェクション
嶋田総太郎(明治大学理工学部)
OS08-2 プロジェクションから考える「ふり遊び」
田中彰吾(東海大学)
OS08-3 対人関係に関する心理療法におけるプロジェクションの活用
三島瑞穂(宇部フロンティア大学)
OS08-4 実環境に存在しない他者をプロジェクションする -他者が実在しなくても,プロジェクションによって社会的変化が生じる-
中田龍三郎(名古屋大学大学院情報学研究科),川合伸幸(名古屋大学大学院情報学研究科)
OS08-5 身体のメンタルモデルと身体所有感の変化が痛み知覚に与える影響
松室美紀(立命館大学 情報理工学部),三浦勇樹(立命館大学 情報理工学研究科),柴田史久(立命館大学 情報理工学部),木村朝子(立命館大学 情報理工学部)
OS08-6 モノマネにおける投射とその共有
久保(川合)南海子(愛知淑徳大学 心理学部)

プロジェクション・サイエンスのセッションが認知科学会で組まれるということで、しばらくぶりに明治の嶋田先生とご一緒します。2017年の冬に認知科学会のシンポに呼ばれて話をさせていただいたのですが、1日話を聞いているうちに、身体性とプロジェクションの関係を考える格好の現象として幼児のふり遊びがあるのではないかと思い、この機に考えたいと思ったしだいです。「ふり遊び」、じつは現実とイマジネーションの関係が背後に控えていてなかなか壮大なトピックなのですが、今回はその初回ということで、問題の入り口について理論的な整理を試みてみます。
 

 

2019年8月4日日曜日

Radical Embodied Cognition (8/27-28 立教大学池袋)

例によってイベントのお知らせ。約3週間後、立教大学で以下のイベントが開催されます。
 
Workshop: Radical Embodied Cognition
2019年8月27日(火)-28日(水)
立教大学池袋キャンパス本館1204教室
 
プログラム
8月27日
10:00-12:30
Ryosaku Makino : “How to co-operate daily activity between disabled person and his family”
Haruka Okui : “The Interactive Body Schema in Japanese Puppetry”
XU Zhu : “Embodied Belief and Self-knowledge”
13:30-17:00
Jean-Michel Roy : TBA
Ryoko Nishii: “Touching the body at Death: Muslim-Buddhist co-existence in Southern Thailand”
Shoji Nagataki : Facial and behavioral expression as a clue to understanding other minds: from a philosophical and an experimental viewpoint
 
8月28日13:00-18:30
Anthony Chemero : “Radical Embodiment and Real Thinking”
YU Feng : “Skill, Practical Wisdom and Motor intentionality”
Takayuki Tomono: “Does passing-through behavior change when you try to pass through two people while their gaze is or is not directed to you?”
Satoshi Sako :  “Projection as a Way of Embodied Learning ― On Metaphor and Abduction”
Shogo Tanaka : “Motor learning and body schema/image distinction”

 
田中は二日目の最後に登壇します。「Motor learning and body schema/image distinction」(運動学習と身体図式/イメージの区別)というタイトルでお話しします。ただいま、身体図式と身体イメージで論文を執筆中なので、それをそのままタイトルにしました。安易なやり方で申し訳ないのですが、発表と執筆を同時進行にしておかないと、仕事が多すぎて手が回らないのですよね…。

ところでこのイベント、新学術領域の「顔・身体学」の主催なんですね。秋にこの領域での科研費の公募があるので、次こそは申請したいなと思っています。このサイトをちょくちょく訪れてくれる研究者の方々、一緒に面白い企画を考えてみませんか?