2023年11月28日火曜日

お知らせ (2/2) 書籍の出版(『自己の科学は可能か』)

以下、お知らせ2件目です。こちらは新刊の情報です。

このブログでもときどき言及していますが、だいぶ前から「自他表象研究会」という場所で若手の実験心理学、認知神経科学の研究者たちと議論を続けています。その研究会の成果がようやく一冊の書物にまとまりました。

田中彰吾(編著),今泉修・金山範明・浅井智久・弘光健太郎(著)『自己の科学は可能か--心身脳問題として考える』新曜社,二〇二四年

 
カバーデザイン、かっこいいですよね。デザインの原案は浅井さん、それをプロのデザイナー重実生哉さんが整形してくれたものです。書店で平積みになってたらかなりの方が手に取ってくれそうです(書店のみなさん、ぜひ平積みにしてください!)
 
内容もかなり尖りがあって面白いものになっていると思います。本文の「とがり具合」の一端をお伝えするために目次を書き出してみます。
 
序「脳と身体とこの私」(田中彰吾)
第Ⅰ部 自己研究の現在地
 第1章 自己研究の体系的な深化のために(田中彰吾)
 第2章 身体性と物語性の架け橋(今泉 修)
 第3章 自己の証明を脳内に見つける苦闘とその失敗(金山範明)
 第4章 自己は本当に脳が作り出すのか(弘光健太郎)
 第5章 「かたち」と「わたし」│ 現実からの脱身体化と抽象空間での具象化(浅井智久)
第Ⅱ部 ディスカッション
 第6章 自己研究の此岸と彼岸

全編そうではありますが、第Ⅱ部のディスカッションはとりわけこの本でないと読めない内容をふんだんに含んでいます。自己を科学的に理解する試みの難しさと面白さが研究者の本音とともににじみ出る内容になっています。

年末または年明けに配本される予定です。お楽しみに〜


お知らせ (1/2) 共著論文 Miyahara Tanaka (2023)

しばらくのご無沙汰でした。研究プロジェクトがあれこれ同時進行なのと、所属先の文学研究科で学位論文の審査2件を抱えていて、いつもにも増して忙しなく動き回っておりました。
 
以下、お知らせが2件あります。うち1件目。
北大の宮原克典さんと共同研究していた内容がようやく論文として形になりました。手元の記録をたどると、最初に論文のプロット案を作ったのが2020年の今頃なので、かれこれ3年かかって書き上げ、投稿し、査読を受け、修正し、掲載された、というなが〜い経緯をたどった一本になります。

https://doi.org/10.1080/09515089.2023.2286281

ナラティブセルフ論を身体性の観点から理解し直す趣旨の論文です。身体は世界との相互作用を通じてさまざまな「習慣」を作り上げる存在ですが、その習慣が「語る」というナラティブ実践にも表れているのではないかという問題意識のもとで議論したものになります。身体性と物語性に関心のある方、このトピックではおそらく今後必読の論文になりますのでぜひご覧ください。