2022年11月30日水曜日

ひと段落ついた

しばらく前から学会や研究会その他の場所でのトーク続きだったのですが、ようやくひと段落つきました。記憶を遡るとこんなスケジュールでした。
・11月26日:現象学会ワークショップ「パフォーマンスの現象学」に登壇
・11月18日:付属甲府高校生向け特別授業
・11月9日:International Conference on Embodied Cognitive Scienceにて講演
・10月30日:質的心理学会シンポジウム「現象学的人間科学の現在」に登壇
・10月22日:「自己」研究者による合同研究会での発表
・10月16日:神経理学療法学会シンポジウム「身体性変容から生きにくさを探る」に登壇
・9月23日:ヨーロッパ学術センター&文明研究所公開シンポジウム「Embodied Spirituality」に登壇
・9月8日:認知科学会シンポジウム「心と身体,脳,社会:心の科学をめぐる哲学者との対話」に登壇
・8月29日:日本心理学会シンポジウム「ナラティブ・セルフをどう研究するか?」を録画、司会と話題提供
・8月23日:日本心理学会シンポジウム「現象学から始まる心理学史と心の哲学史」を録画、話題提供

さすがにこれだけトークの機会が多いと準備がほとんど追いつかず、登壇の直前までスライドを作って準備中、みたいな場面も出てきます。また、毎度似たようなテーマならともかく、初めて話す内容のものがいくつもあったので(特に英語の2件はともに初めて話す内容でした)、その度に準備のために大学からリファレンスをまとめて紙袋に詰め込んで持ち帰る、みたいな生活が続いていました。

…とはいえ、人前で話す機会をいただけるのはありがたいものです。質問を受けて気付かされたり、考えを深めたりすることも多いですし、そう言う意味で議論するのは「拡張した心」の実践なんだなとつくづく思います。いつもと違う対人環境に身体を置くことで、そこから新しい認知の経験が創発するという場面に立ち会っているわけですので。

私は自分だけの「オリジナル」なアイデアがあるとは基本的に考えていません。トークを準備する段階から、いろんな文献と対話して他人のアイデアを借りて自分のトークを織物のように仕立てていき、それを人前で話していろんな質問をもらってそれに応答することで準備段階よりもさらに明確で深い考えに至る、という循環を繰り返しているに過ぎません。どこからどこまでが自分の考えなのか、もちろん論文を書くときにはある程度はっきりさせますが、論文化する前の流動的なアイデアに形を与えていく過程は自分だけでやっているのではなくて公の議論を通じて他人とともに作り出しているので、やっぱり自分「だけ」のアイデアという感じはないのです。逆に、自分一人でやってるつもりになってる人は、他人と議論するのは楽しくないだろうと想像します。

というわけで、いろんな機会に議論を共有してくださった皆さんにこの場を借りて改めて謝意を表しておきたいと思います。ちなみに次は12月16日、オンラインでスウェーデンのSkövde大学の院生向けに話します。

2022年11月12日土曜日

ECogS 2022に参加してきました

11月7日から11日まで、沖縄のOISTでECogS 2022に参加してきました。


一週間毎日、3人ずつゲストスピーカーの講演が各1時間続き、午後にはディスカッション中心のワークショップが組まれているという充実ぶり。プログラムの詳細はこんな感じでした。







































エナクティビズムや身体性認知の界隈ではよく知られている面々がたくさん集まっていて、しかも一週間ずっと(夜の懇親会まで含めて)議論を共有できるという、とても贅沢なイベントでした。再会した方も初めて会った方も、何らかの点で問題意識が強く共有できる方々ばかりで、私にとってはとても幸せなひと時でした。こういうカンファレンスで議論したことは、めぐりめぐって今後の自分の仕事にも大きく影響するものになるだろうと思います。

主催されたトム・フロースさんが沖縄のOISTに移ってこられたのは2019年ごろだったと記憶しています。その前後に北海道大学にCHAINというセンターができて、日本では4E Cognition関連の研究ができる拠点が北と南にひとつずつあるという形になりました。どちらのセンターもそうですが、心と認知の問題を接点にして科学と哲学が対話をしながら新たな研究を創出するところがやはり魅力的であり、特徴にもなっています。北と南にできたのだから、後は東京にも国際的な拠点がひとつできるといいですね。そうなれば、この分野を牽引する研究が日本からいくつも出てくるような日が来ると思います。

そういう未来を予感した一週間でした。