2018年7月25日水曜日

現象学入門-新しい心の科学と哲学のために

今日、見本が届きました。
 
ステファン・コイファー&アントニー・チェメロ著
『現象学入門-新しい心の科学と哲学のために』
田中彰吾・宮原克典訳,勁草書房,2018年7月,定価3300円+税
 

黄色の装丁に緑色の帯で、私が想像していたよりもきれいな仕上がりでした。現物をスキャンしてみた写真が↑です。カバーを外すと黄緑色の装丁になっていて、これもなかなか美しいです(こちらはスキャンしたら色味が残念な感じに変わってしまったので書店で手にとってみてください)。
 
帯に入っている一文「フッサールから現代の身体性認知科学へ」は、本書の特徴をひとことで端的に表現してくれています。現象学を専門にするコイファーと、生態心理学から出発して身体性認知に取り組むチェメロの共著でなければ、こういう本は書けなかっただろうと思います。
 
帯の裏面は訳者解説から文章を拾っていただいたのですが、こちらは先の一文をもう少し丁寧に伝えるものになっているので、ここに掲載しておきます。
 
「本書には大きな特徴が二点ある。一点目は、独特の専門用語や論述の難解さで知られる現象学を、英語圏の哲学に特徴的な明晰な論述スタイルで解説していることである。二点目は、フッサール以来の現象学の中心的なテーマは「身体性認知科学」にこそ最も鮮明に受け継がれている、という著者たちの独自の観点を貫いていることである。それゆえ本書では、現象学という思想的潮流の歴史が、19世紀末の科学的心理学(第1章)、ゲシュタルト心理学(第4章)、ギブソンの生態心理学(第7章)、ドレイファスによる認知主義批判(第8章)、身体性認知科学(第9章)など、通常の現象学入門書ではあまりとりあげられることのないトピックの丁寧な解説とともに描き出されている。」
 
これから現象学を学びたい人、身体性や技能の観点から過去の現象学を振り返ってみたい人、心理学や認知科学の歴史と哲学的基盤に関心がある人、現象学が拓く将来の科学と哲学を考えてみたい人…、とにかく皆さま、手にとってみてください。
 



2018年7月15日日曜日

近況報告

ごぶさたしています。
 
前回の投稿が6/10ですから、1ヶ月以上このブログを更新できない時期が続いていました。理由はいたって単純です。4月から所属先の部署で主任をまかされているのですが、その事務仕事で忙殺されていてここで何かを書く時間がないのです。主任をやっているおかげで大学の中枢で何が起こっているかがわかる場面も増えましたが、それがわかってもポジティヴな気分になることはまずないです(いまどきの大学が置かれている苦境ばかり知ることになります)。知れば知るほど大学をやめるほうがいいんじゃないかと考えることもあります。まあ、研究にも教育にも専念できないポジションというのはとかく精神的に良くないです。
 
以下、とりあえずこの間の活動記録です。

1) 訳書:コイファー&チェメロ『現象学入門-新しい心の科学と哲学のために』(勁草書房近刊)→校正作業が終わりました。アマゾンのページもできています。黄色でいい感じに目立つ装丁なので仕上がりが楽しみです。

2) ブックプロポーザル:3月に開催したBS-BIのシンポジウム、書籍化に向けて、アタリア、ギャラガーの両氏と動いています。プロポーザルがほぼできました。いい出版社から出せるといいのですが。

3) ちなみに、このシンポジウムは自他表象研究会のメンバーもみんな発表してくれたので、その内容を全員で論文化する作業を進めています。夏休みが終わる頃には投稿できるかなぁ。

4) IHSRC:6月下旬に米国サウスカロライナで開かれたInternational Human Science Research Conferenceに参加して発表してきました。現象学の境界領域で、看護、心理、教育、福祉、哲学、倫理などの関係者が集まっていました。ビジネスミーティングで2021年東京開催を打診し、流れを作ってきました。

6) Human Arenasに投稿する特集論文、レビューが「Minor Revision」で掲載可の結果で戻ってきたのでとりあえず修正して再投稿。去年のISTP東京大会のシンポジウムで話した内容を論文化しました。

6) Routledgeから9月に出る予定の「The Challenges of Cultural Psychology」の自分のパートの最終ゲラが届いたのでさっそくチェックして送り返しました。

7) 去る7月7日に、心の科学の基礎論研究会で、東大精神科の榊原さんが拙著の合評会で評者をつとめてくれました。多様なトピックを扱った本ですが、中身を丁寧に読んだうえで行き届いたコメントをくれて、著者として嬉しかったです。批判に十分に応じていない箇所も残ったかもしれませんが、それは今後の宿題とします。
 
8) トーマス・フックスの『脳のエコロジー』、読書会メンバーとともに読み進めています。ただいま2章に入っています。
 
9) 昨年12月に認知科学会・冬のシンポジウムで話したプロジェクション科学の特集論文をただいま執筆しています。
 
…こうやって記録すると、時間がないながらに活発に活動はしています。といいますか、主任で時間を取られて研究できなくなるのはとにかく悔しいので、睡眠時間を削ってやっているというのが本当のところです。
 
では、また。