2019年9月24日火曜日

記念すべき1本 (田中・浅井・金山・今泉・弘光 2019)

以下のレビュー論文が早期公開されました。
田中彰吾・浅井智久・金山範明・今泉修・弘光健太郎(2019)「心身脳問題ーーからだを巡る冒険--」『心理学研究』doi.org/10.4992/jjpsy.90.18403(12月発行予定の90巻5号に掲載予定です)
 
リンクからPDFをダウンロードできますので、ぜひご覧ください。この論文は、2018年3月に開催した国際シンポジウム「Body Schema and Body Image」からのスピンオフです。浅井さん、金山さん、今泉さん、弘光さん、それぞれに発表いただいた内容を私のものと合わせて1本のレビュー論文としてまとめました。
 
共著者の皆さんとは2015年から折に触れて研究会を開催しながら議論を重ねてきたのですが、それがこうして論文にまとまるのは、とても感慨深いものがあります(皆さんありがとう)。全員依拠する分野が少しずつ異なっていますが(実験心理〜神経生理〜神経心理〜哲学)、身体に関心があって、身体と脳の関係を理解し、身体・運動から見えてくる自己を解明しようとする点では共通の問題意識を持っています。議論をすると時間を忘れて熱中することもしばしばです。そんなメンバーで共著論文を書くのは、とても刺激的な経験でした。
 
内容は、19世紀末に始まった身体意識研究の歴史的展開を振り返り、理論的展開をたどりつつ、現代の科学的研究に接合することを企図しています。Body SchemaとBody Imageが鍵になる概念として登場しますが、身体所有感、運動主体感、(ミニマルな)自己とのつながりも論じています。心身問題ではなく「心身脳問題」という術語も、このあたりの問題意識を示唆するこの論文ならではの工夫になっているかと思います。
 
多くの人が参照してくれるレビュー論文になってくれることを祈りつつ、世に送り出したいと思います。
 

 

2019年9月8日日曜日

雑誌『臨床心理学』に寄稿しました

明日発売になる雑誌『臨床心理学』第19巻第5号(金剛出版)に寄稿しました。オープンダイアローグ(フィンランド発祥の精神疾患への対話的介入法)の特集号で、田中は「対話する身体」というタイトルで短い原稿を寄せています。
 

以下、寄稿部分の目次です。

田中彰吾「対話する身体――生きた経験」
 Ⅰ はじめに――対話を支える身体性
 Ⅱ 間身体性、コミュニケーション、他者理解
 Ⅲ 対話の場の生成

私はオープンダイアローグの現場を見学したことがないので、提唱者のセイックラ氏の論文や著作を参考にしながら「対話」を支える身体性について考察しました。だいぶ前から一瞥しただけで積読状態になっていた氏の著作をこの機に読み直してみて、オープンダイアローグがとても効果的な対処法であることは十分に理解できました。自分がそこにいることが無条件に肯定されている、と疾患の当事者が感じられるような場づくりのヒントをたくさん備えているのですね。私は身体性の観点から多少なりともそのようなヒントを読み解く努力をしてみました。ご一読いただけると幸いです。