2024年4月29日月曜日

Hand to Face (Tanaka 2024)

このところ英語の論文は共著ばかりで単著がなかったのですが、ようやく1本出版されました。今回は「Japanese Psychological Research」に掲載されています。

Tanaka, S.  (2024). Hand to Face: A Phenomenological View of Body Image Development in Infants. Japanese Psychological Research.

上のDOIから本文にアクセスできます。PDF版もダウンロードできるようですのでぜひ。

2020年ごろから学会で発表してきた内容をようやく論文にまとめました。タイトルのHand to Faceはもちろん「手から顔へ」という意味ですが、これは幼児の身体イメージの発達を追ったものです。自己鏡像認知ができるようになるのに生後2年ぐらいの時間がかかることは以前から知られていましたが、その段階ではすでに全身のイメージが成立していると考えられます。では、全身のイメージが出来上がる過程で、順番としてはどの身体部位から始まってどの身体部位で終わるのか、既存のエビデンスから現象学的に考察してみたのが本論文の内容になります。で、「手から顔へ」のタイトル通り、幼児の身体イメージはおそらく「手」から始まって最後に「顔」で全体が形成されるという順番になっているのではないか、というのが私の仮説です。身体イメージや自己像の発達に関心のある方にお読みいただけると嬉しいです。

2024年4月20日土曜日

新しい論文 (Iriki & Tanaka, 2024)

年度末〜年度始めでまったくブログを更新できないまま時間が過ぎてしまいました。しばらくぶりのお知らせです。

先日、カリフォルニア大学出版局 (University of California Press) の雑誌『Global Perspectives』から新しい論文が出版されました。理研の入來先生との共著になります。

Iriki, A., & Tanaka, S. (2024). Potential of the path integral and quantum computing for the study of humanities: An underlying principle of human evolution and the function of consciousness. Global Perspectives, 5(1). https://doi.org/10.1525/gp.2024.115651

昨年の7月から理研の客員研究員を務めているのですが、そちらでの仕事の最初の本格的な仕事になります。ちなみに、所属は「未来戦略室」で、RIKEN Quantumの人文学分野(!)の共同研究に従事しています。Quantumは量子コンピュータ関連の研究を推進している部署になるのですが物理学、化学、計算科学などにならんで人文学の部門が設けられているのは驚きですよね。

私は学位論文の頃にユングの共時性を扱ったのですが、ユングの共時性が物理学者パウリとの共同研究に端を発していたことがあり、当時量子力学をわからないながらに随分学んだのでした。量子コンピュータが実用化されたことでひょんなことからまた量子力学の世界に迷い込むことになってしまったのですが、改めて学び直すなかで現象学との同時代性や発想の類似性にいろいろと驚いています。

この論文では、入來先生と重ねてきた議論の一部を形にしてあります。人類進化と意識の問題をファインマンの経路積分に絡めて論じるという壮大な知的冒険の論文になっています。面白いので多くの方に読んでいただけると嬉しいです。DOIをクリックすると本文にたどり着けます。