2019年5月24日金曜日

もうすぐ発売:Thinking about Oneself

更新できないうちにまた1ヶ月たってしまいました。GWは依頼原稿と研究費の申請書を書いているうちにあっという間に過ぎてしまい、気づけば元号も変わっていました…

それで、今回の更新は新著の案内です。友人のルカ・タテオ氏編集による以下の書籍がもうすぐ発売になります。先ほどチェックしてみたら、すでに書影つきでアマゾンのページができていました。

 


タイトルから伝わる通り、リフレクション(反省)がテーマの一冊です。教育や看護のような対人支援領域ではリフレクションを実践に取り入れることが近年盛んになっているようですが、そういう動きとも一脈通じている書物です。というのも、アマゾンの内容紹介にもありますが、行為と対立する作用として反省をとらえるのではなく、具体的な行為のなかに反省を置き直し、生活世界や心的機能のなかで反省が持つ意義を多角的にとらえたものだからです。

最初に原稿を送ったのが2年ぐらい前で、査読&改訂が終わったのも1年以上前でしたから、ずいぶん時間がかかりました。こういう共著ものって、結局早く原稿を出しても他に遅れる人がいるから、たいてい当初の出版予定より後にずれ込むのですよね…。まあ、でも、ちゃんと出版されるところまで話が進んだので安堵しています。担当箇所はこんな感じです。

Shogo Tanaka 
Chapter 9: Bodily origin of self-reflection and its socially extended aspects
 9.1 Introduction
 9.2 Body-as-object for oneself
 9.3 Body-as-object for others
 9.4 Empathy as a socially extended self-reflection
 9.5 A missing part of “me”: Self-reflection and social anxiety
 9.6 The place of beginning
 9.7 Conclusion

反省は基本的には「私が私の経験を振り返る」作用ですが、自己自身を客体化する二重感覚のような身体的経験(自分の手で自分の体に触れる経験)のなかにその萌芽を含んでいます。ただ、以前著作のなかでも論じたように(『生きられた〈私〉をもとめて』第3章)、そのような経験は他者によって客体化されることで初めて動機付けられます。なので、反省するという作用は、「私が私を客体化する」以前に「他者が私を客体化する」という経験にさかのぼって基礎づける必要があります。…といったことを考えていくと、たとえば5節で論じたような社交不安のような経験とも発生的には同じ根っこを持っていることがわかります。反省、自己意識、間主観性、共感、社会不安、をすべてまとめて考察した稀有な(?)論考になっています。ご関心のある方はお問い合わせください。