2020年5月29日金曜日

F・ファノンについて (Ataria & Tanaka, 2020)

初めて、人種差別の問題に言及する論文を書きました。社会問題としての差別について言及しているというよりは、身体的経験として人種差別がどのように生きられているのか、ということを論じたものです。

フランツ・ファノンという黒人の精神科医の経験を主なテクストにして考えています。ファノンは現在はあまり読まれることのない思想家だと思いますが、フランス領マルチニーク出身の黒人としてフランスで教育を受けた人物で、自身の被差別の経験を生々しい文章で1950年代に残しています。

Ataria, Y., & Tanaka, S. (2020). When body image takes over the body schema: The case of Franz Fanon. Human Studies. (online first)

彼が生きた1950年代当時に比べれば、いまの世界にはこれほど激しい人種差別は見られなくなっていると思います。が、目立つものではない分、よりささやかな非言語的経験としてエスニシティにまつわる差別を経験することも現在では増えているようにも思います。視線や接触や言葉づかいのように。身体図式のレベルでの人種差別、とでも言えばいいでしょうか。

この論文、身体図式や身体イメージの観点からエスニシティを考えたい方にご覧いただけると幸いです。