2020年10月21日水曜日

『他者のような自己自身』5章

 読書会の続きです。リクール『他者のような自己自身』その後もフッサーリアンの村田憲郎氏と読み続けています。今回は5章を読みました。要約を公開しておきます。

ポール・リクール『他者のような自己自身』 第5研究「人格的自己同一性と物語的自己同一性」

もともとこの読書会は私自身の研究プロジェクトで「ナラティヴ・セルフ」を主題としているために始まったものですが、本書の内容がようやくその主題に近づいてきました。とはいえ、ぐるぐると螺旋を描くように迂遠しながら進むリクールのこと。第5研究も「人格的自己同一性と物語的自己同一性」と題していながら、実際には人格的自己同一性の議論で話は終わります。

ただ、この章で「人格的自己同一性」の二つのモデルとして「性格」と「約束」について学べたのは個人的には大きな収穫でした。「性格」と自己同一性の関係をどう考えればいいのか以前から気になっていたのですが、リクールの説明は明快です。自己同一性には「自己性」の次元(selfhood)と同一性の次元(identity)があり、前者は「誰が」、後者は「何が」という主題に対応します。

性格は、ひとの身体に備わる習慣的な傾向性を基盤としています。つまり、習慣や好みのように「何が」の同一性が、あるひとの自己性(「誰が」)を包括するようなしかたで現象するときに性格になる、ということです。いわば、身体に備わる傾向性が、匿名的なしかたであるひとの振る舞い方を制御するようになると「性格」と呼ばれるものになる、というわけです。

続きを読むのが少し楽しみになってきました。