2021年12月22日水曜日

「環境と文明」シンポジウム

いつもお世話になっている東海大学新聞の記者、川島省子さんが、先日開かれた東海大学文明研究所のシンポジウムの模様を記事にしてくれました。

2021/12/22「文明研究所が「環境と文明」をテーマに「『文明間対話』サテライト・シンポジウム」を開催しました

記事の冒頭にこんな風にあります--「本研究所は、本学が建学の理想として掲げている「調和のとれた文明社会の建設」を実現するための基礎的研究の場として1959年に創設。」

東海大学はもともと理工系の大学として始まった関係で、発展する近代の科学技術が地球の資源を大量消費することで成立していることに、創立者の松前重義が早くから危機意識を持っていたと聞きます。なので、日本が高度成長期にあった1959年(昭和34年)に早くも「文明研究所」なる組織を設置して、「調和のとれた文明社会の建設」に資する研究を後押ししようとしたのですね。

「文明研究所」という名称だけを聞いてもいまいちピンと来ない人が多いかもしれません。が、現代社会のさまざまな問題を「文明批判」という観点で読み解く、という文脈で考えれば、こういう組織にも大きな役割があるような気がします。環境問題はそうした文脈の代表なのでしょうが、「グローバリゼーションとナショナリズム」「生命・情報テクノロジーと人間の未来」など、考えるべき問題の文脈は他にいくつもありますね。

当日は環境問題がテーマで、私は久しぶりに東北のランドスケープの話をしました。2015年に、東日本大震災後の東北のランドスケープが防潮堤の建設で大きく変わっていく可能性があることを論文で指摘したのですが、今回、準備のために東北の現状を調べてみると、やはり明らかに悪い方向にランドスケープが変わっているように見受けられます。

石巻市雄勝町がもっとも分かりやすい事例ですが、ランドスケープを写真で見る限りほぼ別の村に変貌しています。10m近い防潮堤を陸と海の間に張り巡らせるのですから、そりゃあそうですよね。人口も震災以前の1/3以下に減少しています。津波対策で安全になったから良かったとも言えますが、そもそも住む人がいなくなれば防潮堤にも存在意義がなくなるってもんでしょ? 防潮堤で変貌した三陸のランドスケープ、いずれ自分の目で確かめに行きたいと思っています。