若手研究者の畑田裕二さんがインタビューをもとに記事にしてくださったものです。ミニマルセルフとナラティブセルフ、経験を記述する言葉、身体図式など、VR研究と現象学の接点について、ツボをおさえた話になっていると思います。短いですが読み応えはあると思いますので(畑田さんの質問のおかげです)、ぜひご覧ください。
田中彰吾の心理学&哲学研究室
こんにちは、田中彰吾(東海大学文明研究所所長・文化社会学部教授)です。身体性に関連する心理学と哲学を研究しています。各種お仕事のご連絡はshg.tanaka@gmail.comまでお寄せください。
2025年6月12日木曜日
2025年5月31日土曜日
Phenomenology and the Cognitive Sciences
6月1日付で、SpringerNatureから刊行されている学術誌「Phenomenology and the Cognitive Sciences」の編集委員会メンバーに新たに参加することになりました。すでにホームページに反映されていますので、1日早いですが公表しておきます。
この雑誌は2002年に刊行が始まり、今年はVolume 24が発行されています。もともとShaun GallagherとDan Zahaviが始めた雑誌で、現代現象学を代表するジャーナルになります。私はこの雑誌で自分の論文を今まで発表したことがないのですが、これを機に何か書こうかと思っています。
海外のジャーナルの編集委員は何件もやっていますが、査読がしんどいなぁと感じることが近年増えました。自分の勉強になっているのでその点ではありがたいですが、年齢のせいか、最新の研究でもそれだけでは面白いとは感じなくなりつつあります…。自分自身が新しいものを追い求めるよりも、これまでの学びをまとめるべき年齢になりつつあるからなんでしょうね。
でも、いくつになっても新たな学びに開かれた姿勢を持ち続けたいものでもあります。そういう思いもあって、今回の依頼は引き受けることにしました。良い論文に出会えることを楽しみにしています。
2025年5月19日月曜日
こころの科学とエピステモロジー vol.7
オンラインジャーナル『こころの科学とエピステモロジー』の第7巻が刊行されました。田中は何年か前からほとんど名ばかりで編集長を仰せつかっておりますが、この雑誌が今まで刊行を継続できているのはひとえに渡辺恒夫編集部長のおかげです。この場を借りてお礼申し上げます。
J-STAGE版
また、本誌では「こころの科学とエピステモロジー奨励賞」を授与しております。博士課程の大学院生やポスドク研究員など若手の皆様は今後も奮って本誌にご投稿いただければ幸いです。
2025年5月15日木曜日
メールは復旧しました
前回ここでお知らせしてから1ヶ月近く経ちますが、大学アドレスのメールがようやく通常通り使えるようになりました(「@tokai.ac.jp」のアドレスです)。
使えるようになったのはいいのですが、セキュリティを厳格化したため数時間に1回ぐらいの頻度でスマホに入れたMicrosoft Authenticatorを利用する2段階認証が行われるという状態で、なかなかに使い勝手が悪いです… しかも新しく配布されたパスワードが記憶できないくらい長い… 利便性とセキュリティは両立しない、と言わんばかりです。
2025年4月19日土曜日
メールについてのお願い
すでにニュースになっていますが、所属先の東海大学が17日木曜にサイバー攻撃を受け、大学のネットワークを停止しています。
これに伴い、所属先のアドレス(@tokai.ac.jpのアドレス)にはメールが届かなくなっております(実際には届いているようですがサーバーにプールされているらしく、私は判断がつきません)。
田中宛のメールは当面のあいだ、こちらで公開しているアドレス(shg.tanaka@gmail.com)にお願いします。
それにしても、授業や業務で使用するネットワークがすべて利用できない状態で、あれこれと対応が大変なことになっています…
2025年4月9日水曜日
2025年4月1日火曜日
年度始め
前回の更新から1ヶ月以上経ってしまいました。気づけばすでに4月で新年度ですね。前回の更新からこの間、論文が2本公開されていますのでご紹介しておきます。
田中彰吾「現象学的認知科学の可能性」『学ぶと教えるの現象学研究』第21号,pp. 73-83.
田中彰吾「パラスポーツを通じた他者理解と共生」『パラリンピック研究会紀要』第23号,pp. 1-20.
前者は身体性認知科学の理論篇、後者は身体性認知科学の応用問題としてパラスポーツを考えたものです。特に後者は、冒頭でオートエスノグラフィーとして自分の体験について(河合純一氏に出会ったときのこと)書いております。ご一瞥いただければ幸甚です。
なお、今年度も東海大学文明研究所の所長は継続となります。今までと変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2025年2月22日土曜日
ウェブサイトができました
ただいま進行中のJST-CREST「Narrative Embodiment Project」 のサイトができました。
冒頭に掲示されている通り、このプロジェクトは「物語(ナラティブ)的体験がトップダウンに身体的自己に影響を与える現象を「ナラティブ・エンボディメント」と定義し、そのメカニズムの解明を目指します」という趣旨のものです。
主要な着眼が「物語→身体」というトップダウン方向の影響関係に置かれていますが、「身体→物語」というボトムアップ方向を無視しているわけではありません。念のため。
ただいま、本研究の一部として、リハビリテーション過程における身体性と物語性の関係に迫るべく、脳卒中患者さんにインタビューを試みているところです。その成果はいずれ発表や論文などで公になりますので、お楽しみに。
2025年1月6日月曜日
身体性認知とは何か
しばらく更新できないうちに早くも2025年になっていました。明けましておめでとうございます。
年末年始は溜まっていた宿題をあれこれこなすうちに終わってしまったのですが、そのうちのひとつが翻訳書の仕上げでした。3月ごろになると思いますが、以下のような訳書が刊行されます。
ショーン・ギャラガー『身体性認知とは何か——4E認知の地平』(田中彰吾訳)東京大学出版会,2025年
今日ようやく再校用のゲラの確認が終わったところです。もともと原著は2023年に出版されたもので、82ページのコンパクトな一冊の中で、身体性認知(embodied cognition)、埋め込み認知(embedded cognition)、拡張性認知(extended cognition)、エナクティブ認知(enactive cognition)という4Eの動向すべてについて言及したものになっています。目次の写真を以下に掲載しておきます。
身体性や4Eについて日本語で読める書籍は現状ではほぼありませんので、本書は初めての入門書になるかと思います。訳して全体を日本語で読み直してみると、本文はやや専門性が高いような印象も受けたので、訳者として本文への導入を冒頭に40ページぐらい付けておきました。合わせてご覧いただけると幸甚です。
今年も縁ある皆様にとって良い一年でありますように。
2024年11月9日土曜日
歴史的な一冊が出ます
本日、見本が届きました。
待ちに待った刊行で、すごく嬉しいです! どのくらい待ったかは以下のポストを見ていただければ。
私も寄稿者の一人なのですが、当初の原稿を書き上げてすでに4年半経っています。執筆していたのはコロナ禍が始まった頃なので、かなりの時が流れました。なにせ編者の村田先生・渡辺先生含め執筆者が9名いますから、原稿の足並みが揃わなくでこれだけ時間がかかったわけです。
おそらく、本書は時間をかけてじわじわと読者を広げていくものになると思います。『心の哲学史』というタイトルがややまぎらわしいですが、本書は「心の哲学」の歴史を扱ったものではありません。編者お二人の名前から想像がつくとおり、「心の科学」を哲学史の観点から捉え直す試みです。
近代の心理学はヴントから始まるというのが定説になっていますが、そのヴントが『生理心理学綱要』を刊行した1874年、ブレンターノが『経験的立場からの心理学』を刊行しています。そしてブレンターノこそ、現象学を生み出したフッサールの師であり、他方ではゲシュタルト心理学派の源流に当たる人物なのです。
ブレンターノ〜現象学〜ゲシュタルト心理学と続く「心の科学と哲学」は、現代の身体性認知科学やギブソンの生態心理学へと連なっています。メインストリームの心理学と認知科学から離れた場所で、現象学という豊穣な哲学的思考につながった「心の科学」が脈々と受け継がれてきているのです。
ヴントとブレンターノの関係まで遡るとともに、最も新しい身体性認知と生態心理学まで、現象学を背骨として体系的に歴史を通覧している本書のような書物は、私の知る限り、海外でも類書はほとんどないと思います。その意味で日本の研究の水準の高さを知っていただける一冊になっていると思います。しかも本文638ページで税込3520円ですから、破格の安さです。
本書を紐解くことで、自ら「新しい心の科学と哲学」に挑戦してくれる次世代の若手が現れてくれることを心待ちにしています。
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