2017年1月25日水曜日

雑誌『こころの科学のエピステモロジー』

ちょっとフライング気味ですが、進行中のプロジェクトのお話。

2015年、2016年と2年続きでエンボデディード・アプローチ研究会と合同開催している研究会があります。「心の科学の基礎論」研究会です。

研究会HPの冒頭にはこう書いてあります。

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「心の科学の基礎論」研究会は、自然の科学と同様の意味で心の科学は成立しうるのか、 科学的認識の主体である人間が自らを科学的に認識するとはどういうことか、 そもそも心とは何か、等々の根源的問題を、心理学2500年の歴史と、人工知能・神経科学など 最先端科学の成果を共に踏まえて根源的・徹底的に論じ合うための場として発足した研究会です。
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崇高すぎるくらい崇高な設立趣旨ですね(笑 

まあでも真面目な話、「科学的に心をとらえる」といっても自然科学のように対象を明確に分離して観察できないので、最初から難しい論点が含まれています。だから心理学基礎論とか、「心理学の哲学」といった議論がどうしても必要なのです。私が現象学から出発して、身体との関係を考慮しながら心の問題を問うているのも、こういう事情があります。

しかも、哲学に踏み込むようなそうした科学基礎論的な議論は、先端的な研究のほうが問題になりやすいのですね。安定した研究を可能にする実験パラダイムが一度できてしまうと、現場の研究者は方法論に関する難しい議論はパスして、目先の実験条件を変えることで新しい結果を出そうとする方向に流れますから。

事情は臨床心理学でも変わりません。認知行動療法や精神分析のように安定した臨床上の技法ができてしまうと哲学的な基盤はあまり顧みられなくなりますが、そもそも目の前のクライエントの状態を理解するとはどういうことなのか、治療的介入がなぜ可能なのか、原理的に考えてみる必要はあります。

で、本題です。ここの研究会の世話人メンバー(私もその一人です)で、新しいジャーナルを立ち上げようという話になっています。『こころの科学のエピステモロジー』です。けっこうクールな誌名だと思いません?

今年は国際理論心理学会が8月に東京で開催されますし、日本でも心理学の基礎論や心理学の哲学に関心が高まる一年になると思います。

理論心理学会で発表を予定している皆さんは、ぜひ「心の科学の基礎論」研究会でも発表してください(発表者は随時募集しているので私にご相談いただければOKです)。ジャーナル紙面の一部は、研究会での発表内容を論文化したものに割く予定です。




*2017年5月27日追記
その後、多少の紆余曲折があって、ジャーナルの名前は『こころの科学とエピステモロジー』に変更になりました。「こころの科学」「エピステモロジー」の両者を結ぶ助詞が「の」から「と」になっただけですが、しかしこの一字が変わるだけで、目指すものがだいぶ変わる可能性はありそうです。