もうすぐイスラエルに行くのでその準備。「From Body to Self in Virtual Reality」というなかなか刺激的なタイトルのシンポジウムに呼ばれたので行ってきます。
主催のドロン・フリードマンという方がどんな仕事をしているのか知らなかったので調べてみたのですが、ブレイン-マシン・インタフェース(BMI)とかVRとか、ヴァーチャル・ボディ系(と言っていいのかな、まあ、考えることで外部機器やVRを操作する類の研究です)の方みたいです。その方面ではけっこう知られている方のようですね。シンポのタイトルが「From Body to Self」なのは、つまり、身体から切り離された自己が可能なら、その自己は外部機器やVRに接続しうる、という発想なのでしょう。
私に声がかかったのは、いま離人症を研究しているためです(…と、思います)。離人症では変則的な身体経験がいろいろ生じますが、もっとも顕著なのは自分が身体から離れているように感じるという症状なのですね。少し離れたところからぼんやり自分を傍観しているような状態が生じることが多いと言われます。
これは一方できわめて心身分離的な状態に見えます。他方で、BMIで探索されているのも、ある種の心身の分離と言える面があります(本当は違うように思われますが詳細はまたいつか)。身体が麻痺しても、脳の活動を外部機器に接続して、コンピュータやロボットを動かすことで人工身体を稼働させる研究ですからね。四肢麻痺状態の方でも脳と外部機器を接続して動かしている風景がもっと一般的になる時代もそう遠くないのだろうと思います。
それで、先日ジャーナルに投稿した論文の内容を話すことにしました。離人症で生じる心身の分離体験と、フルボディ錯覚で生じる体外離脱的な体験が似ているのか否か、現象学的に検討しているので、たぶんシンポジウムの趣旨にも合致するんだろうと思います。身体所有感が低下して自己と身体の分離が生じる点は両者とも似ていますが、「どこ」に自分がいるかをはっきり感じられるか否かでは違っています。この「どこ感」まで突っ込んで議論できると、タイトル通りに刺激的なシンポになりそうです。
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