研究アーカイブのページに以下の資料を追加しました。
Haggard (2017). Sense of agency in the human brain. Nature Reviews Neuroscience. doi:10.1038/nrn.2017.14.
エージェンシー(主体感)研究の世界ではよく知られている研究者P・ハガードによるレビュー論文です。3月にオンラインで先行出版されたばかりです。
時間知覚におけるインテンショナル・バインディング、感覚の減衰(sensory attenuation)、行為の自他帰属など、主体感に関係する過去の実験をそのつど参照しながら、重要な論点を比較的網羅的に扱っている印象でした。比較器モデルだけでは主体感は説明できないという点をきちっと述べているあたりはさすがです。
エージェンシーについては、現象学的な議論と絡めてつっこんで考えてみたいと思っています。現状の実験でうまく扱えていないものの、実験で扱うべき重要な論点が隠れている気がするのです。このブログに掲載している以下の資料は、逆に現象学の側でエージェンシーをどう見ているかが分かるものになっています。
S・ギャラガー,D・ザハヴィ (2008/2011). 「行為と行為者性」石原孝二・宮原克典・池田喬・朴嵩哲訳『現象学的な心』(第8章)勁草書房.
ちなみに、統合失調症の「させられ体験」については、実験系の研究者が取りがちな見方とは異なる見解を拙著『生きられた<私>をもとめて』の第2章でも少し述べておきました。興味のある方はご覧いただけると幸いです。
では、また。
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