2017年6月7日水曜日

地味にうれしい仕事…

…をもらった。

イギリスに本社がある某出版社の編集者から突然連絡があって、これから出版される予定の原稿のレビューを頼まれた。著者名や書籍のタイトルはもちろんここには書けない。著者のことは個人的に知っているし、論文も読んだことはあるが、著作を一冊通して読んだことはない。

ちなみに、依頼されたレビューはいわゆる日本の「書評」ではない。論文の「査読」に近いタイプのレビューである。日本では学術書を出版するのに、事前に原稿を専門家に送って評価を聞く習慣がないが、洋書にはある。出版前に、専門分野が近い複数の専門家から意見をもらって、著者がリライトの参考にするのである。

で、メールをもらって驚いたのだが、期間がかなり短い。3~4週間で読んでレビューを書いて欲しいとのことだった。初めてのことだったので嬉しくてさっそく承諾のメールを書いたのだが、日本で普通に勤めているタイミングでこの話をもらっていたら、まず断っていただろう。

だいたい、日本の大学に勤めていると忙しすぎて洋書一冊を短期間で読み通すだけのまとまった研究時間が取れない。セメスター中は週4日必ず本務校で授業があり、プラス1日は非常勤で他の大学で授業がある(人によっては、だが)。その5日は講義の準備と学務で終わるので、残り2日しか研究に割けない。
 
1日で英語の論文を1本きちんと読めるとしても、2日で2本。単著で10章ぐらいあるものだと、1日1章読んでも合計10日はかかる計算である。つまり、単純に見積もってもセメスター中に週末を5回つぶさないと洋書1冊をきちんと読む時間が取れないのである。休み期間に集中的に1冊読んでレビューを書いても、きっと1週間はかかるだろう。とてもじゃないが、日本にいるタイミングでその時間があるなら、他人の本のレビューじゃなくて自分の論文や著作を書く時間に費やすに決まっている。

しかし、である。国外の研究者は3~4週間で自分に近い分野の研究者が書いた原稿を読んでレビューを書くことができるような環境にいるのだろうか(セメスター中であれ休み期間中であれ)。もし彼らがそういう環境にいるなら、日本の大学に所属する研究者はどう足掻いても研究の世界では勝てっこない。