MLで告知が回っていますので、以下に同じ案内を貼り付けておきます。いずれの発表も、文字通り「心の科学の基礎論」をめぐる重要な講演になるものと思われます。例によって田中は帰国前なので参加できませんが…
た
---------------------------
「心の科学の基礎論」研究会( 第80回)のご案内表記の研究会を下記の通り開催いたします。奮ってご参加下さい。
【日時】2017/7/22(土) 午後1:30~5:30(午後1時開場)
【場所】明治大学駿河台キャンパス研究棟2階第8会議室
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
・趣旨 本研究会も80回目(21年目)を迎え、かつオープンアクセスジャーナル「こころの科学とエピステモロジー」
創刊を来年に控え、特集「心理学のエピステモロジー」
と銘打って以下の企画を行います。
・司会 渡辺恒夫(東邦大学/心理学・現象学)
・講演1 加藤義信(名古屋芸術大学/発達心理学)
【題】アンリ・ワロンの発達論の独創性に学ぶ:
現代発達心理学の批判的捉え直しのために
【要旨】心理学は人文・
社会科学の中で最も自然科学化が進んだ領域であると見なされてい
る。その一つの下位分野である発達心理学も例外ではない。/第一線で活躍する多くの発達研究者にとって、
研究するとは、英語の学術誌に掲載された論文を読み、
そこで共有されている問題意識を自らのものとした上で、「科学的」
であると受容される方法の枠内でデータを収集し、
それらを論文に(できれば英語で)仕上げて投稿し新知見のプライオリティ競争に参加することと、
今や同義である。しかし、発達研究において、
自然科学と同様のこうした学問の「制度化」、さらには「国際化」が、
あたかもアメリカを中心に地球規模で成立していると、
本当に考えてよいのだろうか。発達研究が当該研究者(及びその研究者の所属する階級・社会・文化)
の発達観・子ども観・
人間観に深く規定されて一定のバイアスのもとにしか成り立たない学問であるとすれば、この領域における「
自然科学的な学問共同体」
の存在を無自覚に想定するのは幻想に過ぎない。/自戒を込めて言えば、
発表者がこれまで行ってきた認知発達の実験的研究も、
こうした研究スタイルと無縁であったわけではない。ただ、上記のような問題意識だけは若い頃から持ち続けてきたので、一方で、
今や時代遅れとみなされる20世紀前半のフランス語圏の二人の発
達のグランド・セオリスト、ピアジェとワロンにずっとこだわりながら、
英語圏を中心とする発達研究に欠けた視点をそこから学び取ろうと
してきた。特に最近は、
ワロンの発達論に含まれる幾つかのアイデアが現代の発達心理学に
新たな地平を切り開く可能性を有していることに注目してきた。今回は、この点を中心に話題提供することにしたい。
・講演2 山口裕之(徳島大学/哲学・エピステモロジー)
【題】心の科学のエピステモロジー:
現代心理学が暗黙のうちに前提とするものを探る
【要旨】現代の心理学は、「心」を対象とする科学である。
そこには、
丸ごとの人間に介入して結果を質問票などで測るといった研究だけでなく、
何か作業をしているときに使う脳の領域をfMRIなどで測定した
り、神経細胞の電気的反応を調べたりといった「脳の研究」も含まれる。/しかし、そもそも「心」とは何だろうか。
心理学において研究されている「知覚」「知能」「情動」「態度」
などといった概念は、普遍的に妥当する概念なのであろうか。
心は脳と単純に同一視してよいものであろうか。/
少しばかり近代哲学を読んでみると、現代の
心理学とよく似た主題が扱われていることがすぐにわかる。
知覚の研究はデカルトやロックなどに含まれているし、
コンディヤックなどフランス啓蒙思想には人間の発達段階に対する体系的な考察が含まれ
ている。しかし同時に気づくことは、そこで使われている言葉が、
現代の心理学用語とは異なっていることである。
mindではなくsoul(フランス語ではâme)が、
emotionでなくpassionが、それぞれ一見すると前者と同じ意味で使われている。
attitudeやmotivationなどという言葉は見かけ
ず、volontéがそれらと重なりながら大幅にはみ出すような含意で使われる。intelligenceは、
大文字で書けば「神」のことである。全般的に言って、当時の心(
soulないしâme)の議論には、キリスト教的な色彩が濃い。/現代の心理学は、
そうした近代哲学の議論を換骨奪胎することで、「科学」
の一分野となったのである。そしてそのとき、「心」に対する特定の見方が、
暗黙の前提として立てられることになった。今回の発表では、
近代哲学から心理学へ、何が受け継がれ、何が変容したのかを考えることで、現代心理学の「
暗黙の前提」を探りたい。
・誰でも参加できます。申し込み不要、原則無料です。
・注意!研究会はお互いに学び合う場です。
自説を声高に一方的に主張し続けるような行為は迷惑行為に当たり
ますので御遠慮下さい。また、
本研究会は哲学の研究会ではないので、
こころの科学と直接関係のない哲学論議もお控え下さい。
・心の科学の基礎論研究会に関しては、以下のHPをご覧下さい。
https://sites.google.com/site/epistemologymindscience/kokoro・担当世話人:渡辺恒夫 東邦大学(psychotw[アットマーク]
env.sci.toho-u.ac.jp)