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2022年3月9日水曜日

パラリンピックを学際的に読み解く(3/19 オンライン)

ずいぶんご無沙汰しております。イベントの告知があるので久しぶりに書き込みますね。

3月19日(土)、15:20-16:50、オンライン開催です。

「パラリンピックを学際的に紐解く」


今回は日本スポーツ社会学会の企画です。公開企画ということでどなたでも参加できますので、ご希望の方は以下のページをご覧ください。

私はまだ当日何を話すかアイデアが固まっていないのですが、「間身体性」について紹介しながらパラリンピックについて考えるつもりです。東京パラリンピックの際、ボッチャをたまたまTVで見かけて、障がい者の身体と共鳴する身体のあり方についていろいろ思うところがあったので、そういう話をしようかなと思っています。

それにしても、ブログ記事を書く暇がないぐらい忙しいです。しかも学務で。この不本意な忙しさについては、いずれまたここで吐き出します。

2020年3月27日金曜日

間身体性療法が奏功した症例?

友人から来たメールの件名が「間身体性療法が奏功した症例」となっていて、何のことだろうと思って本文を読んでみたら私のことが書いてありました。いわく、若い頃と違って私の笑顔が歪んでいないんだそうです。この写真のことです。

間身体性、ご存知の通りメルロ゠ポンティの概念です。自己の身体と他者の身体のあいだには潜在的に通じ合う関係があって、それはあくびの伝染や笑顔の連鎖のように、同調する身体表現として顕在化します。メールを送ってきた友人によると、若い頃の私は屈託のない笑顔を浮かべることがなく、いつも微妙に歪んでいたとのこと。もちろん、本人的にはそんな自覚はまったくなかったのですが。心外なこと甚だしい(笑

それはともかく、間身体性はコミュニケーション場面でもきわめて重要な要因を果たしています。新型コロナウィルスの感染拡大に応じてテレワークが盛んになりつつありますが、オフィスワークには身体性を共有できる良さと、それに由来する固有の意義があります。おそらく、テレワークが発達すればするほど、テレワークだから実現できることと、オフィスワークだから実現できること、両方の意味が別々に自覚されるようになるだろうと思います。

以下は、そんなことを考えるうえで参考にしていただけるであろうインタビュー記事です。


今回は、オフィスデザインを事業としている「フロンティアコンサルティング」社によるインタビューでした。インタビューはそれこそスカイプではなく私の研究室で同じ空間を共有しながら行ったものです。ウイルスの感染拡大が問題になる前の1月上旬に実施できたのは今思うと幸いでした。

わりと分かりやすい記事にまとめてくださっていると思います。身体性、空間デザイン、オフィス空間に関心のある方々ご覧いただければ幸いです。

 

2020年2月25日火曜日

エンボディードアプローチ研究会 (3/25 東海大学)

新型コロナウィルスの関係で開催できるかどうか微妙ですが、来月25日に研究会を予定しています。オランダから社会心理学の若手研究者トム・フラインス(Tom Frijns)さんが来日されるので、それに合わせてエンボディードアプローチ研究会を開くことにしました。状況によって彼の来日が中止になれば、研究会も中止にせざるを得ないだろうと思います。

以下、ご案内です。無事に開催できるとよいのですが、どうなることやら…。
  
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第9回エンボディードアプローチ研究会

第9回のエンボディードアプローチ研究会は、トム・フラインス氏(ユトレヒト大学講師・社会心理学)をゲストにお招きして実施します。テーマはシンクロニーです。二人以上のひとが集まって会話をはじめとする社会的相互作用を行うとき、そこでは、さまざまな同期が生じています。同期は、非言語行動のような身体的レベルのものから、脳活動の同期のように神経生理学的レベルのものまで、多元的に生じています。午前の部では、嶋田総太郎氏(明治大学・認知神経科学)のご講演を含め、シンクロニーについて概括的なレクチャーを行います。午後の部では、フラインス氏によるレクチャー+ワークショップを行います。

日時:2020年3月25日(水),10:30-17:00
場所:東海大学湘南キャンパス,19号館3階・307教室

プログラム
10:30-11:30
 Shogo Tanaka (Tokai University) 田中彰吾(東海大学)
 “Intercorporeality and social understanding”
11:30-12:30
 Sotaro Shimada (Meiji University) 嶋田総太郎(明治大学)
 “Inter-brain synchronization in social interaction”
12:30-14:00 LUNCH
14:00-15:30
 Tom Frijns (Utrecht University)
 Tom Frijns & Tom Sloetjes (Utrecht University)
 トム・フラインス&トム・スローティエス(ユトレヒト大学)
 “Active synchrony as a means of enhancing students’ willingness and ability to work together” 
 (combined presentation and workshop)
15:30-16:00 COFFEE
16:00-17:00
 Discussion:全体討論
 
問合せ先:田中彰吾(東海大学 body_of_knowledge@yahoo.co.jp)
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2020年2月13日木曜日

電子書籍化『身体の知』

2015年に紙版で刊行された以下の書籍が電子化されたそうです。紙版3960円に比べてキンドルは2500円なのでけっこうお買い得かも。
 
田中も1章寄稿しています。
田中彰吾「心身問題と他者問題-湯浅泰雄が考え残したこと」(pp. 134-154)

湯浅先生は心身問題を他者問題と適切に関連させて考えることをしていなかったと思います。そのため、湯浅先生の他者論は、現在の「心の理論」が陥っているのと同じような理論的問題を含んでいます。この点を考え直すには「間身体性」を考える必要がありますよ、というのが拙論で指摘したことです。心身論と他者論どちらにも関心のある人向けの論考になっております。
 
 

2019年9月8日日曜日

雑誌『臨床心理学』に寄稿しました

明日発売になる雑誌『臨床心理学』第19巻第5号(金剛出版)に寄稿しました。オープンダイアローグ(フィンランド発祥の精神疾患への対話的介入法)の特集号で、田中は「対話する身体」というタイトルで短い原稿を寄せています。
 

以下、寄稿部分の目次です。

田中彰吾「対話する身体――生きた経験」
 Ⅰ はじめに――対話を支える身体性
 Ⅱ 間身体性、コミュニケーション、他者理解
 Ⅲ 対話の場の生成

私はオープンダイアローグの現場を見学したことがないので、提唱者のセイックラ氏の論文や著作を参考にしながら「対話」を支える身体性について考察しました。だいぶ前から一瞥しただけで積読状態になっていた氏の著作をこの機に読み直してみて、オープンダイアローグがとても効果的な対処法であることは十分に理解できました。自分がそこにいることが無条件に肯定されている、と疾患の当事者が感じられるような場づくりのヒントをたくさん備えているのですね。私は身体性の観点から多少なりともそのようなヒントを読み解く努力をしてみました。ご一読いただけると幸いです。




2017年4月11日火曜日

Intercorporeality and aida (Tanaka, 2017)

今日は自分の論文の話題。けっこう時間がかかりましたが、間身体性と「あいだ」について考察した論文が出版されました。掲載誌は理論心理学系のジャーナル『Theory & Psychology』です。

Intercorporeality and aida: Developing an interaction theory of social cognition
Shogo Tanaka, First Published April 9, 2017

アブストラクトはこんな感じです。

The aim of this article is to develop an interaction theory (IT) of social cognition. The central issue in the field of social cognition has been theory of mind (ToM), and there has been debate regarding its nature as either theory-theory or as simulation theory. Insights from phenomenology have brought a second-person perspective based on embodied interactions into the debate, thereby forming a third position known as IT. In this article, I examine how IT can be further elaborated by drawing on two phenomenological notions—Merleau-Ponty’s intercorporeality and Kimura’s aida. Both of these notions emphasize the sensory-motor, perceptual, and non-conceptual aspects of social understanding and describe a process of interpersonal coordination in which embodied interaction gains autonomy as an emergent system. From this perspective, detailed and nuanced social understanding is made possible through the embodied skill of synchronizing with others.

簡単に言うと、社会的認知は以前は「心の理論」を中心に議論がされていました(今もあまり変わっていません)。理論説とシミュレーション説の論争もありましたが、どちらも身体性が欠けている、という批判があります。では、身体性から出発して社会的認知や他者理解を論じるとどうなるのか、というと…説明するのがちょっと面倒になってきたので、そのうち紹介ページでも作ります。とりあえず、昔の研究会で使ったこんな資料を日本語でざっと見てもらうと、何が論点なのかつかんでもらえそうです。

2011 年 2 月 26 日:2010 年度第三回身体知研究会(RMEK)資料
他者理解の科学と現象学―心の理論から間身体性へ

今回の論文は、メルロ=ポンティの間身体性に、木村敏氏の「あいだ」概念をつなげて、考察をさらに発展させたものになっています。身体的な相互行為をベースとして、自己と他者のあいだで創発する間主観性の領域がある、というのが主題です。

…しっかし、長かったです。投稿したのが2016年の2月で掲載が昨日ですから、約14ヶ月かかっています。先日デンマークに出張した際にも、なんでこの雑誌は査読にこんなに時間がかかるのか、酒の席で話題になっていました(半年待たされてリジェクトされたからここには二度と投稿しない、という強烈な恨み節?も耳にしました)。

たしかに、投稿してから掲載まで1年を超えるような雑誌だと、もらっている研究費の成果報告書に書けない場合も出てきますから書き手からすると不満です。自然科学系だとこんなに時間のかかるジャーナルは作れないでしょうね。出版されるころには内容が古くなっているでしょうし。

ですが、個人的にはこの雑誌は気に入っています。査読がちゃんと機能していて、査読者が本文を読み込んでけっこう本気なコメントが帰ってきます。私は今回が2回目の投稿でしたが、前回も今回もコメントはかなりまともで、手続き的にも内容的にも、自分の至らない箇所をふみこんで指摘されました。怖いですねぇ〜(笑 
 
ではありますが、こういう査読のおかげで自分の書くものが出版前に一定のクオリティを保てるわけですし、査読者もたいていの場合はボランティアで査読を引き受けてくれているわけなので、やはりありがたい話なのですよ。テキトーな査読者に原稿が当たらない限りは。




2017/06/08
本日、無事印刷バージョンが出版されました。ページ番号を含めて、論文情報をアップデートしておきます。以下のリンクからPDF版をダウンロードできますよ。
 
Intercorporeality and aida: Developing an interaction theory of social cognition. Theory & Psychology, 27, 337-353.