2018年11月12日月曜日

11/25 質的心理学会シンポジウム

ちょうど2週間後ですが、こういうシンポジウムに登壇します。

日本質的心理学会・第15回大会
11月24〜25日@名桜大学

シンポジウム「ナラティヴを通した他者理解―聞き手の視点と感性に注目しながら」
- 企画・司会:植田嘉好子(川崎医療福祉大学)
- 話題提供者:田中彰吾(東海大学),植田嘉好子(川崎医療福祉大学),能智正博(東京大学)
- 指定討論者:西研(東京医科大学)

 企画趣旨
 ナラティヴは生の出来事についての語りや物語を指し、心理、福祉、医療などの質的研究における重要な手がかりとされてきた。ブルーナーは人間の思考様式を「論理-科学的様式」と「物語的様式」とに分類し、人々の生活の社会文化的次元や個人的豊かさを理解するうえで「物語的様式」の重要性を強調した。また医療では科学的根拠を重視するエヴィデンス・ベイスト・メディスンに対して、患者の語りや対話に基づくナラティヴ・ベイスト・メディスンが提唱されている。
 ただ、こうしたナラティヴは真空のなかに生まれるものではなく、インタビュー等の対話のなかで生じるものであり、あるいはそのようななかで聞き手によって聞き取られるものである。患者やクライエントの語りを、あるいは語られないナラティヴを、他者である私たち研究者はどのように理解し、妥当な研究データとして活用することができるのか。
私たちはこれまでにも学会の場で「ナラティヴ・セルフ」について議論してきたが、前回の議論では、次のようなテーマが浮かび上がっている。
  ①ナラティヴにおける情動や欲望の次元、
  ②語り手と聞き手の関係や相互作用、および聞き手の感性の問題、
  ③ナラティヴ分析におけるパースペクティヴと妥当性の課題
 ナラティヴを用いる実践や研究では、クライエントや研究協力者等の「他者」に対する理解が前提であり重要な目的でもある。しかしそれがどのように聞き手において実現され、第三者へと普遍化されるのか。本シンポジウムでは、上記のテーマを意識しながら田中、植田、能智が話題提供を行い、それを踏まえて現象学者の西が指定討論を行って、人間的な経験の本質に迫るルートとしてのナラティヴに関する議論を深めていきたいと考えている。
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このメンバーでシンポジウムを組むのは2回目で、昨年8月の国際理論心理学会でのシンポジウム以来になります。もっと遡ると発端は2016年7月にエンボディードアプローチ研究会で開催した「人間科学と現象学―他者の経験にアプローチする」にあります。現象学を人間科学に応用するさいには、そもそも研究者がインタビュー対象者をどのように理解できるのかが問題になります。そのとき、インタビューの聴き手と語り手の関係性に依存する次元を超えて相手を理解するには、語り手の表面的なナラティヴを超えて、ナラティヴによって構成されているアイデンティティの次元にまで迫る必要があるんじゃないか、という議論になったのでした。今回の企画も、こうした議論の延長にあります。

今回は会場が沖縄県名護市の名桜大学になります。沖縄に行くのは10年以上ぶりなので、ランドスケープの変化を目にするのも楽しみにしています。