2020年9月30日水曜日

『他者のような自己自身』2章

8月に再開したポール・リクール『他者のような自己自身』の読書会、その後も2〜3週に1回のペースで開催しています。当初、序言>第3研究>第4研究と読み進めたのですが、再開以降、第1、第2に改めて取り組みました。今回は同僚の村田憲郎氏力作の第2研究のレジュメをアップしてあります。

 ポール・リクール『他者のような自己自身』 第2研究「言表行為と語る主体」

本書全体が分析哲学と現象学・解釈学の対話という論調を備えた著作なので、分析哲学の素養のない私には読むのに骨が折れる箇所も多々あるのですが、本書が書かれた1990年ごろの言説状況を考えると、当時のフランスのポストモダン系の議論ではなく分析哲学との対話を押し進めることで、リクールは「主体」や「自己」をめぐる議論を解体するのではなく再構築する方向で議論ができたのだろう、というのが所々でわかります。フーコーやドゥルーズが進んだのとは別の方向ですね。

ところで、昨日の読書会でたまたま年齢の話になりました(村田氏と私は同年です)。ともに40代が終わりに近づいているのですが、フッサールのように晩成型の代表のような哲学者でも前半の代表作である『論理学研究』は40過ぎですでにものにしているんですよね。40代の終わりに近づいても遅々として仕事がものにならない自分たちの境遇を省みて、二人して自己嫌悪に陥ったのでした…

 

 

2020年9月18日金曜日

認知科学会・論文賞をいただきました

 本日、日本認知科学会第37回大会にて、論文賞をいただきました。2019年度に学会誌『認知科学』に掲載された論文のなかで最優秀の論文に授かるとても名誉ある賞で、たいへん嬉しく思っております。受賞論文は、

田中彰吾 (2019)「プロジェクション科学における身体の役割-身体錯覚を再考する」『認知科学』26巻1号,pp. 140-151

です。上記リンクからアクセスできますので、ご覧いただければ幸いです。ラバーハンド錯覚とフルボディ錯覚を題材に、「自己感が身体の外部に離脱しうるか?」という問いについて哲学的に考察する内容になっております。

もともとこの論文は、当初そのアイデアを、2017年12月に開催された認知科学会の冬のシンポジウムで報告したものです。最初は萌芽的なアイデアにとどまっていましたが、当日のシンポジウムでの充実した議論、さらに、投稿後の査読者とのやり取りを経て、中身の充実した論文として仕上がっていった経緯があります。関係されたすべての先生方に、この場を借りて深くお礼申し上げます。

ありがとうございました!

 

2020年9月1日火曜日

リクール『他者のような自己自身』

今年の2月から中断していましたが、リクール『他者のような自己自身』の読書会を再開しました。序言→第3研究→第4研究と読んで中断していたので、途中とばしていた第1研究に戻って再開します。なお、先ほど第1研究のレジュメを追加しておきました。

第1研究:「人物」と同定的指示――意味論的アプローチ

当面のあいだ、隔週の火曜午後にzoomを使って開催を続けます(今日この後開催されるのに合わせてレジュメをアップしておきました)。ご関心のある方はお問い合わせください。