2018年12月2日日曜日

湯浅泰雄賞・受賞のお知らせ

タイトルにある通り、このたび、湯浅泰雄賞をいただくことになりました。昨年上梓した『生きられた〈私〉をもとめて: 身体・意識・他者』(北大路書房)に授かったものです。
 
本日(12/2)、人体科学会の大会で授賞式が開かれることになっており、私も参加すべきところではあるのですが、受賞のお知らせをいただく前に決まっていた「International Workshop on Philosophy of Psychiatry」での講演があるため、参加がかないません。そこで、授賞式でお礼のメッセージを選考委員長の大井玄先生に読み上げていただくようお願いしました。以下、このブログにも掲載することで、読者の皆さま、出版社の関係者の皆さまにもご報告致します。いろいろな形で拙著を応援してくださり、誠にありがとうございました。
 
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このたびは、拙著『生きられた私をもとめて』に湯浅泰雄賞を賜わり、誠にありがとうございます。当初、受賞のお知らせをいただいたときは、ありがたく思うと同時に、とても驚きました。といいますのも、本書は心身二元論の克服を試みるものではありますが、宗教的経験や神秘主義をできるだけ排除して、私なりの見方を提示したものだからです。湯浅先生ご本人の思想とは必ずしも折り合わない内容の書籍であるにもかかわらず、本書を湯浅賞にご推薦いただいた先生、ならびに、ご選考いただいた委員の先生方のご厚情に、改めて深く御礼申し上げます。

私が人体科学会に初めて参加したのは、1999年に中央大学で開催された大会でした。当時まだ大学院生だった私は、たんに知的な理解だけではなく、生き方や実存の問題にかかわる何かを求めて、大会に参加した記憶があります。大会ではいろいろな方にお会いしましたが、私自身は、当時の出会いをひとつのきっかけにして、自分の実存的な関心から離れない研究活動を心がけてきました。とくに、今回の著作には、それが色濃く反映されているものと思います。

今回の受賞を機に、これまでより一層、学ぶことと生きること、そして書くことが有機的につながるような学問を探求し、形にしたいと考えております。これまでと変わらぬご指導をいただければ幸いに存じます。誠にありがとうございました。
 
2018年12月2日
田中彰吾
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すでにやや懐かしい記憶になっていますが、この本を書き上げて初校にとりかかったころ、「自己」というある意味で青臭いテーマ(青年期の自分探しの延長で関心を持つ人が多そうなので)を扱っているものの、いい意味でそういう「青さ」を忘れない読者に届いて欲しいという願いを持ちました(「青い読者に届きますように」)。人体科学会のように、生き方の問題を大事にしている学会で表彰されるなら、拙著にこめられた願いがひとつかなったことになると思います。著者としていま読み直すと至らない点は多々あるのですが、これを機により多くの「青い読者」に届くといいなと願っています。
 
 
2018年12月20日・補記
先日この件で取材を受け、受賞について、東海大学のホームページで紹介していただきました。東海大学新聞の川島省子さんがインタビューをもとに記事を作成してくれました。ありがとうございます!
現代教養センターの田中彰吾教授が著書『生きられた<私>をもとめて』で第12回湯浅泰雄著作賞を受賞しました