2025年10月31日金曜日

メンフィスへ

近く米国のメンフィスに行ってきます。今年3月にショーン・ギャラガーの著作の拙訳を出版できたので、その報告を兼ねてメンフィス大学哲学科のセミナーで身体イメージについて講演を行なってきます。

改めて、訳書はこちらです。

下敷きにした原著はこちらでした。

思えば彼ももうかなりの年齢になります。1948年生まれなので今年で77歳です。この歳で著作も論文も生産性がまったく落ちないのですから驚きです。私はとてもではないですが自分が77歳まで現役で働けている気がしません。定年の65歳まで研究を続けられるかどうかさえ心許ないです。

加えて彼のすごいところは、その読書量です。私は上記の著作以外にも彼の単著の邦訳を手掛けてみたいと思ったことが過去にあるのですが、参考文献の量が多すぎて、自分にはフォローしきれないと感じて諦めました。例えば昨年刊行された彼の『The Self and Its Disorders』は全339ページですが、巻末の参考文献表が57ページですからね! しかも単なる参考文献ではなくてすべて本文中で言及されている引用文献なのです。英書を正確に翻訳するには、本文中に引用されている文献について訳者としてもそれなりに目を通しておく必要があるのですが、ショーン・ギャラガーの書くものについては文献引用が多すぎてフォローしきれません。

上記本の翻訳ができたのは、本文が82ページと短くて、参考文献もなんとか私自身でフォローできる範囲内だったからです。それでも文献表は18ページに及んでいたのです…。私が読む速度では絶対に彼の読書量には追いつけないですが、いくつになっても読み続ける意欲だけは持っていたいものです。

2025年10月22日水曜日

希望を持つこと

事後報告で恐縮ですが、本日、佛教大学の保健医療技術学部にて「生きられた身体のリハビリテーション」と題する講演を行いました。学生さんからの質問も多く、活発な議論ができて良い講演会でした。

同大学の中西英一先生にお声がけいただいて実現した仕事だったのですが、今から13年前の2012年、私がまだ身体知研究会を主催していた頃、当時藍野大学におられた中西先生にお声がけして、研究会で講演をしていただいた前段があったのでした。

当時の先生の講演は今でもよく憶えています。統合失調症患者のリハビリテーションについて、現場をご存知の方だけが持つ独特の迫力があるご講演でした。

あれから13年、私自身、リハビリテーションの分野とも、精神科の分野とも、コラボレーションをする機会が多くなりました。その分野の知見については未だに素人の域を出ないのですが、昨年には関連する内容で著作を出すこともできました。

研究は今も遅々とした歩みですが、こうして旧交を温めることができるほど、互いに研究を続けられたことに感謝するばかりです。

スペイン語では希望を「esperanza 」と言いますが、語源の「esperar」という動詞は「待つ」という意味です。未来に向かって開かれた姿勢を保って待ち続けることが希望の意味なのですよね。その意味で、いろんな研究仲間ともう一度出会うことができるまで、これからも希望を持って研究を続けようと思った一日でした。


2025年10月19日日曜日

備忘録

「少し前からパソコンの調子が悪くて、集合時間について書いてあるメールを開くことができなかった」

「以前の慣例では集合が9時または9時20分になっていることが多かったので、今日もそのつもりで来た」

「今日は日曜日でいつもと電車の時刻表が違っており、乗る予定にしていた電車が来ず、駅でしばらく待たされた」

「それに加えて体調を崩しており、家を出るのがそもそも少し遅れた」

まるで子どものような言い訳である。が、言い訳の主は子どもではない。大学教授の肩書きを持つ大人である。9時集合(厳守)のところ9時38分に到着したある教授が以上のような愚にもつかない言い訳を重ねていた。それをたまたま聞き及ぶ場面に遭遇したので、備忘録として記しておこうと思った次第。

子どものような言い訳、という表現はむしろ子どもに失礼かもしれない。子ども以下の言い訳しかできないこんな教授には、反面教師としての価値さえなかろう。ただのクズである。

2025年10月10日金曜日

河野・田中 (2025) 注意欠如・多動症(ADHD)の身体性研究の鳥瞰図をえがく

前回更新から2ヶ月経ってしまいました…。書きたいことが特になかったわけではなく、むしろこのブログに書き留めておきたいようなことも沢山あるのですが、そんなことよりも目の前に押し寄せる仕事をひたすらこなしていたら何も書けずに2ヶ月あっという間に過ぎ去っていました。

さて、新しい論文が出たのでご報告です。

河野友勝・田中彰吾 (2025). 注意欠如・多動症(ADHD)の身体性研究の鳥瞰図をえがく:「生きられた身体」の現象学的視点から.認知科学,32(3),412-435.

雑誌『認知科学』の特集「不定性と逆境のなかの希望」に掲載されました。第一著者の河野さんは北大の大学院生で、認知科学と身体性と科学哲学をADHDのテーマに即して研究しているという珍しい方です。ここ3年ぐらい田中ゼミにも出入りして共同研究をしてきたのですが、その成果が論文として形になりました。

ぜひご覧いただければ。