2023年9月20日水曜日

JST-ANRの新規プロジェクト

以下、ご報告です。

今年の6月に明治大学の嶋田総太郎氏を代表として申請したJST-CRESTの研究課題がめでたく採択されました。田中は、主たる共同研究者として畿央大学の森岡周氏と共に名前を連ねております。

2023年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)の新規研究課題及び評価者について

研究課題名称は以下です。

(英) Narrative embodiment: neurocognitive mechanisms and its application to VR intervention techniques

(日) ナラティブ・エンボディメントの機序解明と VR 介入技術への応用

日英表記になっているのは国際共同研究プロジェクトだからです。今回は、CRESTとフランスANR(国立研究機構, Agence Nationale de la Recherche)の連携プロジェクトに応募したものなので、英語版は日本側とフランス側で内容を揃える、というなかなかハードルの高い申請でした。申請前にフランス側のチームと何度もオンライン・ミーティングを重ね、細かいところまで詰める努力を重ねたので、今回の採択は本当に嬉しいです。

プロジェクトの骨子ですが、リハビリテーション場面を対象にして、患者のナラティブ・セルフのあり方が予後にどのように影響するかを現象学的に解明し、その成果をVRに応用することでより効果的なリハビリ介入技術の開発につなげるというものです。以下のビジュアル・アブストラクトがわかりやすいかもしれません。

昨年、神経理学療法学会のシンポジウムに登壇した際に少しだけ話したのですが、認知神経科学の知見を参照するリハビリテーション技法はすでにかなり発展してきているものの、現場に残された課題に、患者さんのナラティブをどう扱うかという問題があります。リハビリテーションの予後と、患者さん一人一人の多様なナラティブやナラティブに基づく自己のあり方は、かなり深い関係があると思われますが、今のところ経験則を超えてきちんと検証された知見はありません(例えば自己効力感が高い患者さんのほうが予後が良さそうだ、といった経験則はあるのです)。身体性と物語性を結ぶものが現状では科学的に解明されていないのですから、当然と言えば当然ですよね。

今回のプロジェクトは、この点に科学的に挑戦するものになります。認知神経科学とリハビリテーションだけではなく、患者さんの体験世界に迫るうえで現象学的な質的研究を用いる計画になっています。現象学的なインタビューを日仏双方で実施して、データの分析を進める予定です。患者さんの多様なナラティブ・セルフのあり方とリハビリテーション過程の相関を理解することが目標です。

近く東海大学でもポスドク研究員を募集します。現象学を学んだ経験のある方で、質的研究とリハビリテーションに研究領域を広げていく意欲のある方を求めております。公募情報は近くJREC-INで公開しますので、そちらをご覧ください。研究員の仕事に関心のある方は個人的にお問い合わせいただいても構いません。きっと、プロジェクトに参加すること自体が充実した経験になるだろうと思います。

よろしくお願いします。


2023年8月31日木曜日

初の英語インタビュー

先日、初めて英語でインタビューを受けました。「Ikigai Tribe」というコーチング団体を運営しているニック・ケンプさんという方によるものです。最初に問い合わせを受けたときに「生きがい」論って専門じゃないので…」と言い逃れをしようとしたのですが、「じゃあ「あいだ」の話でお願いします」と返されたので、うーん、ならば研究の宣伝を兼ねてやってみるか〜と思ってお受けしました。以下で聴くことができます。英語なのでところどころ言い淀んでいますがご容赦ください。

IKIGAI podcast 66: Navigating Aida and Intercorporeality with Prof. Shogo Tanaka

ちなみに、ケンプさんが運営している「Ikigai Tribe」は以下のリンクからたどれます。

IKIGAI TRIBE

https://ikigaitribe.com/

「生きがい論」って日本語よりも英語の文献のほうが今では増えつつあるみたいで、これも新鮮な発見でした。

2023年8月24日木曜日

ポストコロナ時代の言語教育 (8/29-30 北海道大学)

直前で恐縮ですが、メールでは関係者にご連絡していた通り、来週北海道大学の下記イベントに登壇します。

「ポストコロナ時代の言語教育におけるオンライン授業と翻訳AI・生成AIへの対応に関する研究」

【日時】2023年8月29日(火)15:00-18:00、8月30日(水)15:30-18:15

【場所】北海道大学高等教育推進機構S講義棟

【参加費】無料

【事前申込】https://forms.gle/qYy7C6qeTb54GjCe6


北海道大学と言えば個人的にはCHAIN(人間知×脳×AI研究教育センター)とのつながりが深いのですが、今回は情報基盤センターの主催だそうです。田中は、以前手がけたオンラインと対面での会話の身体的相互作用分析の研究が関係者の目に留まったそうで、お声がけいただきました。残念ながら30日に朝から神奈川で仕事があるので29日日帰りの強行スケジュールなのですが、30日は特にAIの大規模言語モデルを教育現場でどう活用すべきかという論点に踏み込む内容になっていますので、言語教育の分野ではかなり「攻めた」内容の研究会になることは間違いないと思います。ぜひ以下からプログラムをご覧ください。

https://www.hokudai.ac.jp/events/pdf/230727_event2.pdf

北海道方面の皆さま、どうぞお越しください。


2023年8月14日月曜日

パラリンピック研究会ワークショップ (8/23 Zoom)

来週、以下のイベントでお話する機会をいただきました。

日本財団パラスポーツサポートセンターパラリンピック研究会
第42回ワークショップ
「パラスポーツを通じた他者理解と共生社会」
8月23日(水)、10:00〜11:30
オンライン開催

過去に開催された同研究会のワークショップ情報は以下で見られます。

パラスポーツの実践者ではない私がお話しするのもおこがましいのですが、以前、スポーツ社会学会誌に寄稿したパラリンピック関連の論文がご縁でお声がけいただきました。身体論の研究者として、パラスポーツや共生について思うところをお話しできればと思っております。パラリンピアンの河合純一氏が指定討論に応じてくださるということで、私にとっても、パラスポーツ選手の、とくに視覚障害のある方の生きられた経験にどこまで迫ることができるのか、新たな挑戦になる気がしています。

ご関心のある方は、日本財団の上記のページ右上に「お問い合わせ」リンクがあります。リンク先からZoomのアドレスをメールで問い合わせてみてください。

よろしくお願いします。

2023年8月11日金曜日

やり切った!

40th International Human Science Research Conference(IHSRC 2023 Tokyo)を大過なく終えることができました。ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。ビジネスミーティングでも報告した通り、参加者は112名(ちなみに11カ国からの参加がありました)、陣屋でのディナーも60名以上の参加者があり、とても盛況でした。

個人的に振り返ると、国際的なイベントは何度か(小さなシンポまで入れると何度も)手がけてきましたが、今回ほど「やり切った!」と感じたことはありません。また、参加する側として運営の素晴らしさに感心したことは何度かあるものの、運営する側でこれほど感謝されたのは初めてでした。

大会運営を長らく手伝ってくださった村井尚子先生、植田嘉好子先生、奥井遼先生、安達未菜先生の各位には、特にお名前を挙げて感謝の意を表します。他にもたくさんの方々の支えをいただきましたが、以上のメンバーには、企画、招聘、ホームページ管理、会場運営、ロジスティックス、等々のすべてに渡って特別にお力添えをいただきました。2016-17年ぐらいから日本に招致したいと思い続けてきた国際会議なので、実現できたことが本当に嬉しくてありがたいです。

開催を終えた今は、大会テーマだった「Intercorporeality: (Re)Connecting people beyond social distance」をなんとか実現できたように感じています。カンファレンス本体もそうですが、特に陣屋のカンファレンス・ディナーに参加された方々にはそれが伝わったのではないか、いつか未来のIHSRCで語り種になるのではないか、と願っています。

ありがとうございました。


2023年7月31日月曜日

IHSRC 2023 Tokyo 参加者向け情報

いよいよ来週7日からIHSRC 2023が始まります。参加者向けのMLで先ほど英語版のインフォメーションを流しましたが、同じ情報を以下に掲載しておきます。

<大会スケジュール>

ここでは割愛します。インフォメーションをご覧ください。

(8/2追記:昨日大会プログラムがサイト上で公開されました。https://ihsrc2023tokyo.jp/abstract/ からダウンロードしてご利用ください。)

<Wi-Fi>

キャンパスLANの「Keyaki」からインターネットを利用できます。ログインID、パスワードは英文のインフォメーションに掲載してある通りです。

<電車>

小田急線をご利用ください。大会期間中、「鶴巻温泉」駅から会場までマイクロバスのサービスがあります。徒歩で来場する場合の最寄駅は「東海大学前」駅になります。

<バス・サービス>

大会期間の8月7日〜11日まで、プログラム開始前の時間帯に、鶴巻温泉駅から大会会場までをマイクロバスが巡回します。以下の時間帯に鶴巻温泉南口からバスにご乗車ください。

・7日、13:00〜13:40(ワークショップが14時から始まります)

・8日〜11日、08:00〜08:40(基調講演が9時から始まります)

<最寄駅>

上記時間帯以外に徒歩で来場される場合は、東海大学前駅をご利用ください。キャンパスまで徒歩約15分です。バスを利用する場合、駅南口1番乗り場から「下大槻団地」行きにご乗車ください。運賃は210円でPASMOの利用が可能です。

キャンパスマップはこちら

https://www.u-tokai.ac.jp/about/campus/campus-shonan/

<会場>

湘南キャンパスの14号館にお越しください。14号館の場所は上記キャンパスマップからご確認いただけます。

1F入って左手奥に受付デスクを設置しております。

<利用教室>

・8月7日・ワークショップ:1F 105教室

・8月8日〜11日・基調講演とシンポジウム:1F 104教室

・8月8日〜11日・個人研究発表:2F 205/206/207/209教室

・8月8〜11日・フリースペース:2F 204教室

<プレゼンテーション>

個人発表は質疑を含め30分です。キャンセルがあった場合は当日会場にてお知らせします。

(8/2追記:各会場でノートPC、プロジェクターを利用できます。データのみの持参で発表は可能です)

<ランチ>

2Fのエスカレーター前コーナーでランチを配布します。ヴィーガンの方はお申し出ください1F、2F、地下のフリースペースまたは屋外を食事にご利用ください。食後の弁当箱は2Fコーナーにお持ちください。

<懇親会>

7日夕方に19号館1Fカフェテリアで懇親会を予定しております。ワークショップの参加者は終了後に19号館に移動します。懇親会のみご参加の方は17:30ごろに19号館1Fにお集まりください。

<ディナー>

10日夜に陣屋でのディナーを予定しております。参加される方は、17:30ごろに14号館エントランス付近からバスにご乗車ください。また、事前に申し込まれていない方ように数席を確保しております。参加希望の方は受付までお申し出ください。

 

では、来週会場でお会いしましょう!


2023年7月1日土曜日

『自己と他者』後日談

いつも通り手短に。本日は2022年3月に出版した『自己と他者:身体性のパースペクティヴから』の後日談です。

①もう半年近く前になりますが、本書の一部が入試で出題されました。ひとつは早稲田大学(教育学部)で、ケルパー(物理的身体)とライプ(生きられた身体)の違いを扱った序文からの出題でした。問題の一部で内容的にかなり難しい箇所に傍線が引かれていて受験生がちょっと気の毒な気がしました。…できない受験生を落とすために敢えてそうしている、ということなんでしょうね。

もう一件、北里大学でも入試に使ってくれたそうです。こちらは第5章の乳児の社会的アフォーダンスを扱った箇所からでした。間身体性と社会的アフォーダンスを論じた箇所なので、著者としてもここを切り取って問題に使ってくれるのは嬉しいな、と感じる出題でした。

ちなみに、2017年に出版した『生きられた〈私〉をもとめて』は入試に使われたことがないのですが、書いた本人からするとこちらのほうが受験生には読みやすいし、出題もしやすいのではないかと思う次第です。もしかして、いくつか残っている誤植が足を引っ張ってるのかな?

②先月、本書の書評が『こころの科学とエピステモロジー』第5号に掲載されました。評者は芹場輝さんです。私自身が編集委員長を務めている雑誌なので若干「やらせ」な印象は否めないかもしれませんが、内容への評価はまっとうなものだと思います。離人症治療へのVR応用についての指摘は、私もほぼ首肯できる内容でした。一方、冒頭でマルクスに寄せて書評が始まっているところはなんとも大時代的で、ずっこけます(笑 

 

気づけば7月。本書『自己と他者』を第3巻に収めるシリーズ「知の生態学の冒険 J・J・ギブソンの継承」ですが、ついに最終巻の第9巻『アフォーダンス:そのルーツと最前線』が来月下旬には刊行されます。お楽しみに。



2023年6月4日日曜日

科学基礎論学会での講演 (6/11 東海大学)

前回更新してからすでに3ヶ月近く経ってしまいました。この間、公私ともにあまりに色々ありすぎてこのページを更新する時間がまったく取れませんでした。今日も事情は変わらないので手短かに告知を一件だけ。



















6/11 13:30-14:30
科学基礎論学会・特別講演
「身体性認知からサピエント・パラドックスを考える」
 
非会員の方も1000円で参加できるそうですので、ぜひ。

2023年3月8日水曜日

もうすぐ刊行です:『入門ゼミナール』

セメスターが終わって休み期間に入って久しいのですが相変わらず忙しなく自転車を漕ぐように操業する日々が続いています。今回は共編著がもうすぐ出ますというご案内。



この本は大学1年生向けの教科書です。勤務先の東海大学では2022年度から新カリキュラムが導入され、その一環として教養教育も一部入れ替えがありました。アカデミック・スキルを教えることを中心に編成された1年生向け科目がこの『入門ゼミナール』という科目になります。

すでに1年間教えたのですが、学生の反応は良好でした。大学で学ぶ意義を考えるところから始め、文献の読み方、データの扱い方、レポートの書き方、ディスカッションの技法まで体系的に学ぶ授業です。前期の学生の反応を見ながら、同僚の大江先生、黒崎先生とともに教科書化を目指して動き始め、学文社の田中千津子社長のご好意で出版できたという次第です。

全国の多くの大学で導入教育用にご利用いただける水準のものに編集されていると思います。大学関係者の皆さま、ぜひいちどご覧いただければ幸甚です。

2023年2月13日月曜日

IHSRC 2023のウェブサイトができました

前回の投稿から早くも1ヶ月以上がたってしまいましたので、なにはともあれ投稿します。今回も夏に開催されるIHSRCの情報です。

①大会ウェブサイトがオープンしました(>ご尽力いただいた奥井遼先生、ありがとうございます)。

IHSRC 2023 Tokyo

https://ihsrc2023tokyo.jp/

正式名称は「40th International Human Science Research Conference」(第40回人間科学研究国際会議)です。大会テーマは「Intercorporeality: (Re) Connecting people beyond social distance」です。大会テーマに見合うものに限らず、現象学と質的研究に関連する発表を歓迎します。心理学、看護学、教育学、社会福祉学、心理療法、理学療法、作業療法など、どのような分野でも、現象学に関連する研究であれば発表していただけます。ぜひご参加ください。

②大会での発表申し込み方法

以下の情報を英文で作成してください。

・発表タイトル

・発表者氏名

・所属

・メールアドレス

・アブストラクト本文(200ワード程度)

送付先は「ihsrc2023@gmail.com」です。メール本文に上記情報を記載しても、ワードファイルで添付して送っていただいても結構です。投稿締切は4月15日となります。まだ2ヶ月ありますので、準備の時間は十分にあるかと思います。大学院生には参加費の割引もありますので、積極的にお申し込みください。

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それにしても、あっという間に日々が過ぎていきます。忙し過ぎて記憶がぼんやりしているのですが、前回の投稿からこの間、次々とやってくる仕事をひたすらこなすだけの日々を送っていたように思います。なんとか、その合間を縫って『知の生態学の冒険』シリーズの第9巻『アフォーダンス』の原稿を書き進めました。共著者の河野哲也先生の原稿も合わせて、本文がほぼできてきましたので、夏頃には刊行まで漕ぎ着けられそうです。お楽しみに。


2023年1月11日水曜日

IHSRC 2023開催予定

すでに1月11日ですが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

2023年はようやくIHSRCを開催できる見込みです。当初2021年に開催予定でしたが、パンデミックの影響で延期・再延期という扱いになっておりました。なんとか現在の状況が推移すれば、以下の期間に開催できる予定です(対面を予定しており、オンラインに切り替える措置は行いません)。

40th International Human Science Research Conference (IHSRC 2023)
時期:2023年8月7日(月)〜11日(金)
会場:東海大学高輪校舎

記念すべき第40回大会になります。現象学を用いた質的研究を行う研究者が集まる学会です。心理・看護・教育・福祉など、さまざまな分野からの参加者が例年見られます。現象学的な質的研究は過去10〜15年で世界的にも分野を超えて幅広く定着してきましたが、日本でも特に看護分野を中心に同様の流れが見られます。この機会にぜひご参加ください。

ただいま、ホームページなどを整備しているところです。大会の関連情報は、今後MLを通じて随時配信します(配信は2月ごろから始める予定です)。情報を希望される方は「ihsrc2023@gmail.com」までご一報ください。いただいたアドレスをMLに追加します。

多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

2022年12月12日月曜日

第3回人間科学研究会 (12/17オンライン)

以下の日程で第3回人間科学研究会を開催することとなりました。今回は、教育学から村井尚子先生、看護学から西村ユミ先生をお招きして、それぞれの分野における現象学と質的研究についてご講演いただきます。年末のお忙しい時期と存じますが、どうぞ奮ってご参加ください。

日時:2022年12月17日(土),14:00〜17:15

Zoom開催(ミーティングIDは田中までお問い合わせください:shg.tanaka@gmailcom)


<プログラム>

14:00〜15:30 講演1

「教育的タクトの涵養――共感性を手がかりとして」村井尚子(京都女子大学)

要旨:今回の発表では、ドイツ教育学において長年議論されてきた教育的タクトをどのようにすれば養成できるのかを、まずはヴァン=マーネンの所論を援用しながら考えていきます。最初に、ヴァン=マーネンの来歴とオランダのユトレヒト学派の現象学からの影響について概観し、次に彼の教育学研究の主要テーマである「教育的タクト」について事例を用いつつ分析します。ヴァン=マーネンは教育的タクトが涵養可能という立場を取りながらも、その具体的な方途については詳細には触れていません。そこで本発表の後半では、共感性の涵養という視点からこの問題にアプローチしていきたいと考えています。

15:45〜17:15 講演2

「現象学を手がかりとした質的研究とは?――課題と可能性を考える」西村ユミ(東京都立大学)

要旨:現象学を手がかりとした質的研究には、多様なものがある。これまで、心理学や看護学等において多様な方法が紹介され、数多くの研究成果も報告されてきた。しかし、人間諸科学には其々の研究文化があり、研究方法もその文化に左右されて構築されている。哲学者のDan Zahaviは、一方で、現象学を導入した人間諸科学の幾つかの方法に対して厳しい指摘をし、他方で、現象学を参照した研究の可能性に言及している。本発表では、これらの指摘を引き受けつつ、現象学的研究の可能性について提案する。


*本研究会は科研費(20H04094,21K01989)の助成を受けて開催されます

2022年11月30日水曜日

ひと段落ついた

しばらく前から学会や研究会その他の場所でのトーク続きだったのですが、ようやくひと段落つきました。記憶を遡るとこんなスケジュールでした。
・11月26日:現象学会ワークショップ「パフォーマンスの現象学」に登壇
・11月18日:付属甲府高校生向け特別授業
・11月9日:International Conference on Embodied Cognitive Scienceにて講演
・10月30日:質的心理学会シンポジウム「現象学的人間科学の現在」に登壇
・10月22日:「自己」研究者による合同研究会での発表
・10月16日:神経理学療法学会シンポジウム「身体性変容から生きにくさを探る」に登壇
・9月23日:ヨーロッパ学術センター&文明研究所公開シンポジウム「Embodied Spirituality」に登壇
・9月8日:認知科学会シンポジウム「心と身体,脳,社会:心の科学をめぐる哲学者との対話」に登壇
・8月29日:日本心理学会シンポジウム「ナラティブ・セルフをどう研究するか?」を録画、司会と話題提供
・8月23日:日本心理学会シンポジウム「現象学から始まる心理学史と心の哲学史」を録画、話題提供

さすがにこれだけトークの機会が多いと準備がほとんど追いつかず、登壇の直前までスライドを作って準備中、みたいな場面も出てきます。また、毎度似たようなテーマならともかく、初めて話す内容のものがいくつもあったので(特に英語の2件はともに初めて話す内容でした)、その度に準備のために大学からリファレンスをまとめて紙袋に詰め込んで持ち帰る、みたいな生活が続いていました。

…とはいえ、人前で話す機会をいただけるのはありがたいものです。質問を受けて気付かされたり、考えを深めたりすることも多いですし、そう言う意味で議論するのは「拡張した心」の実践なんだなとつくづく思います。いつもと違う対人環境に身体を置くことで、そこから新しい認知の経験が創発するという場面に立ち会っているわけですので。

私は自分だけの「オリジナル」なアイデアがあるとは基本的に考えていません。トークを準備する段階から、いろんな文献と対話して他人のアイデアを借りて自分のトークを織物のように仕立てていき、それを人前で話していろんな質問をもらってそれに応答することで準備段階よりもさらに明確で深い考えに至る、という循環を繰り返しているに過ぎません。どこからどこまでが自分の考えなのか、もちろん論文を書くときにはある程度はっきりさせますが、論文化する前の流動的なアイデアに形を与えていく過程は自分だけでやっているのではなくて公の議論を通じて他人とともに作り出しているので、やっぱり自分「だけ」のアイデアという感じはないのです。逆に、自分一人でやってるつもりになってる人は、他人と議論するのは楽しくないだろうと想像します。

というわけで、いろんな機会に議論を共有してくださった皆さんにこの場を借りて改めて謝意を表しておきたいと思います。ちなみに次は12月16日、オンラインでスウェーデンのSkövde大学の院生向けに話します。

2022年11月12日土曜日

ECogS 2022に参加してきました

11月7日から11日まで、沖縄のOISTでECogS 2022に参加してきました。


一週間毎日、3人ずつゲストスピーカーの講演が各1時間続き、午後にはディスカッション中心のワークショップが組まれているという充実ぶり。プログラムの詳細はこんな感じでした。







































エナクティビズムや身体性認知の界隈ではよく知られている面々がたくさん集まっていて、しかも一週間ずっと(夜の懇親会まで含めて)議論を共有できるという、とても贅沢なイベントでした。再会した方も初めて会った方も、何らかの点で問題意識が強く共有できる方々ばかりで、私にとってはとても幸せなひと時でした。こういうカンファレンスで議論したことは、めぐりめぐって今後の自分の仕事にも大きく影響するものになるだろうと思います。

主催されたトム・フロースさんが沖縄のOISTに移ってこられたのは2019年ごろだったと記憶しています。その前後に北海道大学にCHAINというセンターができて、日本では4E Cognition関連の研究ができる拠点が北と南にひとつずつあるという形になりました。どちらのセンターもそうですが、心と認知の問題を接点にして科学と哲学が対話をしながら新たな研究を創出するところがやはり魅力的であり、特徴にもなっています。北と南にできたのだから、後は東京にも国際的な拠点がひとつできるといいですね。そうなれば、この分野を牽引する研究が日本からいくつも出てくるような日が来ると思います。

そういう未来を予感した一週間でした。

2022年10月9日日曜日

神経理学療法学会 10/15-16 大阪

先ほど当日のトークの準備を始めましたので、以下に告知をば。来週、大阪で「神経理学療法学会」の大会が開催されます。

第20回日本神経理学療法学会学術大会

2022年10月15〜16日、大阪国際会議場にて

大会テーマが「我々は何者か、どこに向かうのか」という壮大で魅力的なものになっております。私は16日の以下のシンポジウムに登壇します。

共催シンポジウムⅤ(日本看護科学学会共催)「身体性変容から生きにくさを探る」

10月16日(日)10:00~12:00、第2会場(5階・小ホール)

お題は「生きにくさ」です。うーむ…。私自身がいろんな生きにくさを抱えた当事者でもありますから、改めて人様の前に出て何を語るべきか考えてしまいますね。スライドを作り始めたのはいいのですがタイトルページだけ作って手が止まってしまったので、とりあえずブログ記事を書いてみました。ちなみに、登壇される先生方と演題は以下のようになっております。

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  • 「脳卒中上肢麻痺患者の生きにくさに対する看護ケア」大久保 暢子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科 ニューロサイエンス看護学 教授)
  • 「回復期にある脳卒中患者の生きにくさの様相とケア」酒井 郁子(千葉大学大学院 看護学研究院 教授)
  • 「身体性の変容は社会における営みを変容させる」片岡 保憲(日本高次脳機能障害友の会 理事長)
  • 「"私が運動を制御している"と感じられることの意義とは?」宮脇 裕(国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 人間拡張研究センター 共創場デザイン研究チーム)
  • 「無いはずの手に経験する痛みへ接近する」大住 倫弘(畿央大学大学院 健康科学研究科 准教授)
  • 「身体性とナラティブから考える「生きにくさ」」田中 彰吾(東海大学 文化社会学部 教授・文明研究所 所長)

座長

  • 信迫 悟志(畿央大学大学院 健康科学研究科 准教授)
  • 江草 典政(島根大学医学部附属病院 リハビリテーション部 療法士長)

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さすが「生きにくさ」だけあって、それぞれ大変そうな印象を受けるタイトルですね。私は順番も最後みたいなので、なんとかまとめになるようなお話を考えてみます。

理学療法系と看護系の学会の共催イベントということで、貴重な場になるかもしれませんね。会場に来られる皆さんも含め、お会いできるのが楽しみです。