2021年11月15日月曜日

訳者みずからレジュメ作り(3)

コイファー&チェメロの『現象学入門』、今回はメルロ゠ポンティを扱った5章のレジュメ。

第5章 モーリス・メルロ゠ポンティ――身体と知覚

私自身がメルロ゠ポンティを研究しているので細かいところで本書の記述に言いたいことがないわけではないが(メルロ゠ポンティを紹介するのにハイデガーに寄せ過ぎではないかという点)、やはりハイデガーの章に続いて入門書としてはよく出来ていると思う。シュナイダー症例については、昔なら木田元『メルロ゠ポンティの思想』がメルロ゠ポンティ自身の著作に当たる前のいい入り口になってくれていたが、本書はさらにコンパクトでかつ分かりやすい。

疑問が残るのは最後の4節か。知覚の恒常性の向こうに垣間見えており、知覚主体を離れて存在しているように見える「自然的対象」もまた、身体から切り離されてそれ自体として存在しているのではない、とコイファー&チェメロは解説している。が、他方で、あらゆる経験の地平として統一された世界があり、それが自然的対象を理解可能なものにしている、との記述を与えている。どう理解すればいいか、読者自身で確かめてみていただきたい。