2026年2月24日火曜日

第6回人間科学研究会 (3/21 オンライン)

来月オンライン研究会を開催します。現象学と質的研究を扱う国際会議「International Human Science Research Conference」を2023年に日本で開催したことをきっかけにして生まれた研究会です。参加ご希望の方は私までメールでご連絡ください。折り返しZoomのアドレスをお送りします。今年も2件の講演を予定していますが、どちらもかなり面白くなりそうです!
 
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第6回人間科学研究会
2026年3月21日(土) 13:30-16:45,Zoom開催
(参加ご希望の方は、田中彰吾(東海大学 )までメール(shg.tanaka@gmail.com)にてご連絡ください。Zoom 参加情報をお送りします。)

13:30-15:00 講演1
「仏教からの現象学入門、その逆もまた然り:エポケーとしてのマンドフルネス瞑想」
田端健人(宮城教育大学)
「仏(buddha)」とは、古代インドのパーリ語で「覚醒した者」のことである。この覚醒への第一歩は、誰でもいつでもどこでもこの身このままで歩むことができる。その一つが、米国でストレス低減医療法として開発され成果をあげてきた、仏教由来のマインドフルネス呼吸瞑想である。本発表では、聴講者と共にこの瞑想の初歩を実践し、そこで生じる自我の二重化を経験してみる。次に、各自のこの生身の経験を現象学的に記述することで、この経験がフッサールのいうエポケー(判断中止)の一種であり、覚醒する新たな自我が超越論的主観性であることを確認し、現象学の核心を仏教的に実感をもって理解する。
その上でこの二重の自己の成長と「知の完成(般若波羅蜜多)」について、仏陀とフッサールの言葉をもとに考えてみたい。

15:15-16:45 講演2
「女子刑務所における不確かな身体感覚や感情の言語化過程」
宮崎あゆみ(日本女子大学・国際基督教大学)
刑務所は生きられた場の網目から断裂した場所 (Leder 2016) であり、女性受刑者たちは、過去の自己像から切り離される実存的危機に直面している。また受刑者の多くが、貧困や差別やパートナーからの暴力を経験し、摂食障害などの身体的精神的問題を抱え(仲野 2021)、子供と別れ、母親役割が果たせない恥や罪の意識や痛みを経験している。このような状況で、彼女たちが自らの身体や感情を感じることは至難の業である。本発表では、女子刑務所の窃盗再犯防止プログラムの観察とインタビューをもとに、女性受刑者たちの生きられた経験を明らかにし、どのように彼女たちが講師と共に言葉を紡ぐことで、自らの身体感覚や感情を取り戻しながら、立ち直り、癒されていくのかを考えたい。

2026年2月14日土曜日

行間をめぐる対話の記録

今週は光栄なことに私の著書を深く読み解いていただく機会が重なりました。いずれの場も、単なる内容の紹介に留まらず、著者の私自身が「そこまで読み込んでいただけたのか」と襟を正すような、濃密で幸福な時間でした。

1. 「シラス」でのオンライン対談

ひとつは、動画配信プラットフォーム「シラス」の番組への出演です。『身体と魂の思想史-「大きな理性」の行方』を軸に、多角的な視点から切り込んでいただきました。

https://shirasu.io/t/srs/c/srs/p/20260120140526

画面越しではありましたが、提示される問いの鋭さに、私自身が自分の思考を改めて掘り起こされるような感覚を覚えました。オンラインという場が、これほどまでに深い思索の共有地になり得るのだと再発見した次第です。

2. 能智先生・尾見先生主催の読書会

もうひとつは、東京大学の能智正博先生、山梨大学の尾見康博先生が主催される研究会にお招きいただいたことです。こちらでは、『自己と他者-身体性のパースペクティヴから』を題材に、読書会という形で議論を深めました。質的研究の最前線におられる両先生、そして熱心な参加者の皆様が、文字通り「行間まで」徹底的に読み込んでくださった上での質疑応答。著者が意図した細部、あるいは無意識に書き置いていた余白にまで光を当てていただき、対話を通じて理論がさらに血肉化されていくような、贅沢なひとときでした。

本を書くという作業は、ときに孤独な営みです。しかし、こうして丁寧に読み解かれ、真摯な問いを投げかけられることで、言葉は初めて社会の中に居場所を見つけるのだと感じます。貴重な機会をくださった皆様、番組をご視聴いただいた皆様、研究会にご参加くださった皆様に、この場を借りて深く感謝申し上げます。

いただいた多くの刺激を糧に、また次なる思索へと繋げていこうと意を新たにした1週間でした。

2026年2月13日金曜日

量子人文学特集

もうすぐ『認知科学』誌上で、入來篤史先生と私で編集した次の特集が公開される予定です。

『認知科学』第33巻1号
特集「人文学の新しい次元-量子論のメガネで覗く-」

かなりインパクトのある特集になっていると思います。本特集では、微小な物理現象を扱う量子力学そのものというより、その数理的・論理的枠組みをマクロな現象に応用する「汎量子モデル(Quantum-like Modelling)」に注目しています。非可換確率論や重ね合わせ、文脈依存性といった概念を用いることで、従来の古典論では「不合理」とされてきた人間の知覚、意思決定、美的認知などを、より精密かつ合理的に記述することを目指します。

特集では10本の論考を通じ、具体的な現象から理論的基盤までを網羅しています。
>現象論:人類学における観察構造、身体的知覚理論(私の担当分です)、美的認知の多義性、教育や臨床における不確定性、進化・文明史の因果論 、複雑系医学。
>本質論:アリストテレス哲学と因果論、量子測定のインストルメント理論、圏論による非可換確率論の再構成、量子シミュレータの活用。

量子コンピュータの実用化が迫る今、量子論的な認知フレームへの転換は、人文学を根本から刷新する可能性を秘めています。既存の学問領域を横断し、人間存在の複雑さに迫る特集になっていると思います。

文字面を見るだけで「難しそう…」という声が聞こえてきそうですね。まぁ、確かに難しい論文もありますが、実際に読んでみていただければ知的興奮に包まれるのではないかと思います。ご期待ください。

2026年2月2日月曜日

「シラス」に出演します (2/11)

オンラインの放送プラットフォーム「シラス」に出演することになりました。小山政幸さんが運営している「徹底実践、スピリチュアル再生シラス」です。スピリチュアル系の番組ということで依頼があったとき最初は思わず身構えたのですが、拙著『身体と魂の思想史』を丁寧に取り上げてくれそうなので出演することにした次第です。

放映は来週になります。
2月11日(水)19:30〜20:30

有料番組なのでチャンネル購読されているメンバーの方が視聴者の中心になりそうですが、番組単体でも購入できるので関心のある方はぜひ遊びに来てください。「身体論×スピリチュアリティ」は、いろいろ議論できることがある領域ですが、そのぶん議論が濃くなりすぎる予感もするので、メンバー以外の方が遊びに来て中和してくれるとちょうど良くなる気がします。