2021年12月14日火曜日

再掲:人間科学研究会(12/18オンライン開催)

 今週末に以下の内容で研究会を開催します。ご関心のある方はどなたでも参加できますので、以下のフォームからお申し込みください。「人間科学研究会」は、現象学的な方法にもとづく質的研究を、心理学・教育学・看護学・社会福祉学など対人支援分野で実践することを支援する研究会です。現場での現象学の応用に関心がある方々への参加を広くお勧めします。

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第2回人間科学研究会(共催:第89回心の科学の基礎論研究会)

2021年12月18日(土),13:30〜17:30

オンライン開催(Zoom利用)

申込方法:以下のフォームより、12月17日18時までにお申込ください。ZoomのIDは登録されたメール宛にお送りします。

→申込フォーム:https://forms.gle/JTgHL65hKnsCgdnJ9

<プログラム>

13:30-13:40 開会の挨拶「人間科学研究会とIHSRC開催の経緯」 田中彰吾

13:40-15:15 講演1「直接経験を超える質的心理学に向けて」 田中彰吾(東海大学)

 現象学的な質的研究では、生活世界における「生きられた経験」について、当事者へのインタビューを通じて接近することが試みられる。そこでは一般に、(1)記述的方法:データを読み込みながら心理学的意義を特定し、一般化できるような経験の構造を抽出する、(2)解釈的方法:データに表出しているさまざまなテーマを特定し、テーマの相互関係から経験の意味を全体として理解する、等の方法が用いられる。これらの方法によって各種の「生きられた経験」が明らかにされれば、対人支援の現場で役立つ知見を提供することができるだろう。ただし、こうした作業だけでは、経験をトップダウンに構造化する社会的な作用(時代的要因、社会的権力、文化的背景など)との関係で、人々の「生きられた経験」に迫ることはできない。この報告では、イギリスの現象学的心理学者ラングドリッジによる「批判的ナラティブ分析」を参考にして、「生きられた経験」に影響を与える社会的作用を可視化する方法とその意義について考える。

15:15-15:30 休憩

15:30-17:30 講演2「生態学的現象学とポスト現象学」 河野哲也(立教大学)

 生態学的現象学は、現象学とJ・J・ギブソンの生態心理学を融合させた立場である。現象学は、経験がその当事者にとっていかなる意味を持って現れるのかを、一人称的な視点から記述しようとするものである。現象学では、経験の当事者とは身体的主体であり、主体を取り巻く世界は「私はできる」という運動志向性の相関項として現れる。それに対して、ギブソンの生態心理学は、動物を取り巻く環境をアフォーダンスに満ちたニッチとして捉える。私見では、運動志向性とアフォーダンスは対をなしており、これらの相関を分析することで環境と身体の相補性が理解でき、これを人間科学の基本的な方法論として考えることができる。さらに人間は、テクノロジーにより自らの身体性を拡張し、メディアにより人間関係を拡張する。テクノロジーにより拡張した主体を研究対象とする「ポスト現象学」(アイディ、ヴァービーク)と生態心理学が組み合わさることで、環境―技術―身体を分析できる人間科学の視座を獲得できるだろう。


リンク「心の科学の基礎論研究会」

https://sites.google.com/site/epistemologymindscience/kokoro?authuser=0

本研究会の関連科研費:研究課題17H00903,20H04094,21K01989