こんにちは、田中彰吾(東海大学文化社会学部教授/大学院文学研究科長/文明研究所所長)です。身体性に関連する哲学と心理学を研究しています。各種お仕事のご連絡はshg.tanaka@gmail.comまでお寄せください。
2024年2月17日土曜日
自己であることと科学すること
第4回人間科学研究会 (3/2 オンライン)
IHSRC日本開催に連動して2019年から年1回のペースで開催してきた「人間科学研究会」ですが、このたび以下の日程で第4回研究会を開催することになりました。今回は、教育学分野から奥井遼先生(同志社大学)、社会福祉学分野から植田嘉好子先生(川崎医療福祉大学)にご講演いただきます。現象学と質的研究にご関心のある皆様、どうぞ奮ってご参加ください。
第4回人間科学研究会
日時:2024年3月2日(土)14:00〜17:15,オンライン
Zoom開催(参加希望の方は事務局の田中までお問い合わせください)
14:00〜15:30 講演1
「エキスパートの生きられた経験 ――糸操り現代人形劇の現場から」奥井遼(同志社大学)
要旨:本発表では、現代人形劇を事例として、「わざ」を身につけた人における生きられた経験を記述する。発表者はこれまで京都の小さな人形劇団において、稽古や公演の場に居合わせながら参与観察を重ねてきた。その中で、稽古をするたびに舞台運びがスムーズになっていく様子や、限られた舞台装置の中で表現スタイルを模索する姿などを目の当たりにして、わざを習得することに伴う知覚の変容や、優れたわざを身につけた人ならではのものの見方を知るに至った。それは必ずしもわざの獲得や上達という単線的で量的な拡張を意味するものではない。むしろ葛藤や矛盾も含めたダイナミックな経験の質の変化にほかならない。これらも含め、本発表ではわざを遂行している人たちについての「〈生きられた〉空間や時間や世界」の「報告書」を記すことを目指す。
15:45〜17:15 講演2
「“明けない夜はない”―救急医療ソーシャルワーカーの専門性確立への途(みち)」植田嘉好子(川崎医療福祉大学)
要旨:救急医療の現場では予告なしに生命の危機状態にある患者が運び込まれ,同時に,虐待や自殺,貧困,身寄りなし、オーバーステイ、ごみ屋敷等の社会的課題も顕在化する.今回取り上げるのはこれらに対応する救急認定ソーシャルワーカー(ESW:Emergency Social Worker)の認識である。病院内外でのさまざまな対立(医療職、患者、家族、行政、地域の他機関、制度政策)をどのように乗り越え、専門職としての地位を確立してきたのか。またそれは何を目指したものであったのか。時間の猶予がほとんどない中で行っているESWの洞察や推理,判断,根拠の確かめ,逡巡や葛藤,挑戦などの実践経験の意味を、熟練ESWらへのインタビューから現象学的に明らかにしていく。
2024年1月27日土曜日
Web連載 (新曜社クラルス)
2024年1月6日土曜日
シンポジウム (1/20 お茶の水女子大学)
2023年11月28日火曜日
お知らせ (2/2) 書籍の出版(『自己の科学は可能か』)
以下、お知らせ2件目です。こちらは新刊の情報です。
このブログでもときどき言及していますが、だいぶ前から「自他表象研究会」という場所で若手の実験心理学、認知神経科学の研究者たちと議論を続けています。その研究会の成果がようやく一冊の書物にまとまりました。
田中彰吾(編著),今泉修・金山範明・浅井智久・弘光健太郎(著)『自己の科学は可能か--心身脳問題として考える』新曜社,二〇二四年
全編そうではありますが、第Ⅱ部のディスカッションはとりわけこの本でないと読めない内容をふんだんに含んでいます。自己を科学的に理解する試みの難しさと面白さが研究者の本音とともににじみ出る内容になっています。
年末または年明けに配本される予定です。お楽しみに〜
お知らせ (1/2) 共著論文 Miyahara Tanaka (2023)
2023年10月4日水曜日
ポスドク研究員募集
少し前に予告していましたが、東海大学でポスドク研究員を募集しています。JREC-INでの情報掲載も始まりましたので、以下にリンクを貼っておきます。
https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?id=D123100163
業務内容はもちろん、JST-CREST「マルチセンシング」2023年度採択課題「ナラティブ・エンボディメントの機序解明と VR 介入技術への応用」(2023-2028年度)への参加です。
・現象学と身体性認知に関する専門知識を持つ方を広く募集しています。
・現象学的な質的研究の経験を持つ方が望ましいです。
・哲学分野での経験のない方も応募していただけますが、その場合は理学療法の知識と経験を有する方を優先します。
・学位取得が今年度末になる場合は相談に応じます。
プロジェクトの概要を知りたい方は、ぜひ前回投稿も合わせてご覧ください。
リハビリテーションの現場に出向いて、患者さんにどのような変化が起きているのか、丁寧に記述するところからデータの収集を始める予定です。現場の記述と哲学的思考の往復に挑戦する意欲のある方、募集をお待ちしております!
2023年9月20日水曜日
JST-ANRの新規プロジェクト
以下、ご報告です。
今年の6月に明治大学の嶋田総太郎氏を代表として申請したJST-CRESTの研究課題がめでたく採択されました。田中は、主たる共同研究者として畿央大学の森岡周氏と共に名前を連ねております。
2023年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)の新規研究課題及び評価者について
研究課題名称は以下です。
(英) Narrative embodiment: neurocognitive mechanisms and its application to VR intervention techniques
(日) ナラティブ・エンボディメントの機序解明と VR 介入技術への応用
日英表記になっているのは国際共同研究プロジェクトだからです。今回は、CRESTとフランスANR(国立研究機構, Agence Nationale de la Recherche)の連携プロジェクトに応募したものなので、英語版は日本側とフランス側で内容を揃える、というなかなかハードルの高い申請でした。申請前にフランス側のチームと何度もオンライン・ミーティングを重ね、細かいところまで詰める努力を重ねたので、今回の採択は本当に嬉しいです。
プロジェクトの骨子ですが、リハビリテーション場面を対象にして、患者のナラティブ・セルフのあり方が予後にどのように影響するかを現象学的に解明し、その成果をVRに応用することでより効果的なリハビリ介入技術の開発につなげるというものです。以下のビジュアル・アブストラクトがわかりやすいかもしれません。
昨年、神経理学療法学会のシンポジウムに登壇した際に少しだけ話したのですが、認知神経科学の知見を参照するリハビリテーション技法はすでにかなり発展してきているものの、現場に残された課題に、患者さんのナラティブをどう扱うかという問題があります。リハビリテーションの予後と、患者さん一人一人の多様なナラティブやナラティブに基づく自己のあり方は、かなり深い関係があると思われますが、今のところ経験則を超えてきちんと検証された知見はありません(例えば自己効力感が高い患者さんのほうが予後が良さそうだ、といった経験則はあるのです)。身体性と物語性を結ぶものが現状では科学的に解明されていないのですから、当然と言えば当然ですよね。今回のプロジェクトは、この点に科学的に挑戦するものになります。認知神経科学とリハビリテーションだけではなく、患者さんの体験世界に迫るうえで現象学的な質的研究を用いる計画になっています。現象学的なインタビューを日仏双方で実施して、データの分析を進める予定です。患者さんの多様なナラティブ・セルフのあり方とリハビリテーション過程の相関を理解することが目標です。
近く東海大学でもポスドク研究員を募集します。現象学を学んだ経験のある方で、質的研究とリハビリテーションに研究領域を広げていく意欲のある方を求めております。公募情報は近くJREC-INで公開しますので、そちらをご覧ください。研究員の仕事に関心のある方は個人的にお問い合わせいただいても構いません。きっと、プロジェクトに参加すること自体が充実した経験になるだろうと思います。
よろしくお願いします。
2023年8月31日木曜日
初の英語インタビュー
先日、初めて英語でインタビューを受けました。「Ikigai Tribe」というコーチング団体を運営しているニック・ケンプさんという方によるものです。最初に問い合わせを受けたときに「生きがい」論って専門じゃないので…」と言い逃れをしようとしたのですが、「じゃあ「あいだ」の話でお願いします」と返されたので、うーん、ならば研究の宣伝を兼ねてやってみるか〜と思ってお受けしました。以下で聴くことができます。英語なのでところどころ言い淀んでいますがご容赦ください。
IKIGAI podcast 66: Navigating Aida and Intercorporeality with Prof. Shogo Tanaka
ちなみに、ケンプさんが運営している「Ikigai Tribe」は以下のリンクからたどれます。
https://ikigaitribe.com/
「生きがい論」って日本語よりも英語の文献のほうが今では増えつつあるみたいで、これも新鮮な発見でした。
2023年8月24日木曜日
ポストコロナ時代の言語教育 (8/29-30 北海道大学)
直前で恐縮ですが、メールでは関係者にご連絡していた通り、来週北海道大学の下記イベントに登壇します。
「ポストコロナ時代の言語教育におけるオンライン授業と翻訳AI・生成AIへの対応に関する研究」
【日時】2023年8月29日(火)15:00-18:00、8月30日(水)15:30-18:15
【場所】北海道大学高等教育推進機構S講義棟
【参加費】無料
【事前申込】https://forms.gle/qYy7C6qeTb54GjCe6
北海道大学と言えば個人的にはCHAIN(人間知×脳×AI研究教育センター)とのつながりが深いのですが、今回は情報基盤センターの主催だそうです。田中は、以前手がけたオンラインと対面での会話の身体的相互作用分析の研究が関係者の目に留まったそうで、お声がけいただきました。残念ながら30日に朝から神奈川で仕事があるので29日日帰りの強行スケジュールなのですが、30日は特にAIの大規模言語モデルを教育現場でどう活用すべきかという論点に踏み込む内容になっていますので、言語教育の分野ではかなり「攻めた」内容の研究会になることは間違いないと思います。ぜひ以下からプログラムをご覧ください。
https://www.hokudai.ac.jp/events/pdf/230727_event2.pdf
北海道方面の皆さま、どうぞお越しください。
2023年8月14日月曜日
パラリンピック研究会ワークショップ (8/23 Zoom)
2023年8月11日金曜日
やり切った!
40th International Human Science Research Conference(IHSRC 2023 Tokyo)を大過なく終えることができました。ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。ビジネスミーティングでも報告した通り、参加者は112名(ちなみに11カ国からの参加がありました)、陣屋でのディナーも60名以上の参加者があり、とても盛況でした。
個人的に振り返ると、国際的なイベントは何度か(小さなシンポまで入れると何度も)手がけてきましたが、今回ほど「やり切った!」と感じたことはありません。また、参加する側として運営の素晴らしさに感心したことは何度かあるものの、運営する側でこれほど感謝されたのは初めてでした。
大会運営を長らく手伝ってくださった村井尚子先生、植田嘉好子先生、奥井遼先生、安達未菜先生の各位には、特にお名前を挙げて感謝の意を表します。他にもたくさんの方々の支えをいただきましたが、以上のメンバーには、企画、招聘、ホームページ管理、会場運営、ロジスティックス、等々のすべてに渡って特別にお力添えをいただきました。2016-17年ぐらいから日本に招致したいと思い続けてきた国際会議なので、実現できたことが本当に嬉しくてありがたいです。
開催を終えた今は、大会テーマだった「Intercorporeality: (Re)Connecting people beyond social distance」をなんとか実現できたように感じています。カンファレンス本体もそうですが、特に陣屋のカンファレンス・ディナーに参加された方々にはそれが伝わったのではないか、いつか未来のIHSRCで語り種になるのではないか、と願っています。
ありがとうございました。
2023年7月31日月曜日
IHSRC 2023 Tokyo 参加者向け情報
いよいよ来週7日からIHSRC 2023が始まります。参加者向けのMLで先ほど英語版のインフォメーションを流しましたが、同じ情報を以下に掲載しておきます。
<大会スケジュール>
ここでは割愛します。インフォメーションをご覧ください。
(8/2追記:昨日大会プログラムがサイト上で公開されました。https://ihsrc2023tokyo.jp/abstract/ からダウンロードしてご利用ください。)
<Wi-Fi>
キャンパスLANの「Keyaki」からインターネットを利用できます。ログインID、パスワードは英文のインフォメーションに掲載してある通りです。
<電車>
小田急線をご利用ください。大会期間中、「鶴巻温泉」駅から会場までマイクロバスのサービスがあります。徒歩で来場する場合の最寄駅は「東海大学前」駅になります。
<バス・サービス>
大会期間の8月7日〜11日まで、プログラム開始前の時間帯に、鶴巻温泉駅から大会会場までをマイクロバスが巡回します。以下の時間帯に鶴巻温泉南口からバスにご乗車ください。
・7日、13:00〜13:40(ワークショップが14時から始まります)
・8日〜11日、08:00〜08:40(基調講演が9時から始まります)
<最寄駅>
上記時間帯以外に徒歩で来場される場合は、東海大学前駅をご利用ください。キャンパスまで徒歩約15分です。バスを利用する場合、駅南口1番乗り場から「下大槻団地」行きにご乗車ください。運賃は210円でPASMOの利用が可能です。
キャンパスマップはこちら
https://www.u-tokai.ac.jp/about/campus/campus-shonan/
<会場>
湘南キャンパスの14号館にお越しください。14号館の場所は上記キャンパスマップからご確認いただけます。
1F入って左手奥に受付デスクを設置しております。
<利用教室>
・8月7日・ワークショップ:1F 105教室
・8月8日〜11日・基調講演とシンポジウム:1F 104教室
・8月8日〜11日・個人研究発表:2F 205/206/207/209教室
・8月8〜11日・フリースペース:2F 204教室
<プレゼンテーション>
個人発表は質疑を含め30分です。キャンセルがあった場合は当日会場にてお知らせします。
(8/2追記:各会場でノートPC、プロジェクターを利用できます。データのみの持参で発表は可能です)
<ランチ>
2Fのエスカレーター前コーナーでランチを配布します。ヴィーガンの方はお申し出ください1F、2F、地下のフリースペースまたは屋外を食事にご利用ください。食後の弁当箱は2Fコーナーにお持ちください。
<懇親会>
7日夕方に19号館1Fカフェテリアで懇親会を予定しております。ワークショップの参加者は終了後に19号館に移動します。懇親会のみご参加の方は17:30ごろに19号館1Fにお集まりください。
<ディナー>
10日夜に陣屋でのディナーを予定しております。参加される方は、17:30ごろに14号館エントランス付近からバスにご乗車ください。また、事前に申し込まれていない方ように数席を確保しております。参加希望の方は受付までお申し出ください。
では、来週会場でお会いしましょう!
2023年7月1日土曜日
『自己と他者』後日談
いつも通り手短に。本日は2022年3月に出版した『自己と他者:身体性のパースペクティヴから』の後日談です。
①もう半年近く前になりますが、本書の一部が入試で出題されました。ひとつは早稲田大学(教育学部)で、ケルパー(物理的身体)とライプ(生きられた身体)の違いを扱った序文からの出題でした。問題の一部で内容的にかなり難しい箇所に傍線が引かれていて受験生がちょっと気の毒な気がしました。…できない受験生を落とすために敢えてそうしている、ということなんでしょうね。
もう一件、北里大学でも入試に使ってくれたそうです。こちらは第5章の乳児の社会的アフォーダンスを扱った箇所からでした。間身体性と社会的アフォーダンスを論じた箇所なので、著者としてもここを切り取って問題に使ってくれるのは嬉しいな、と感じる出題でした。
ちなみに、2017年に出版した『生きられた〈私〉をもとめて』は入試に使われたことがないのですが、書いた本人からするとこちらのほうが受験生には読みやすいし、出題もしやすいのではないかと思う次第です。もしかして、いくつか残っている誤植が足を引っ張ってるのかな?
②先月、本書の書評が『こころの科学とエピステモロジー』第5号に掲載されました。評者は芹場輝さんです。私自身が編集委員長を務めている雑誌なので若干「やらせ」な印象は否めないかもしれませんが、内容への評価はまっとうなものだと思います。離人症治療へのVR応用についての指摘は、私もほぼ首肯できる内容でした。一方、冒頭でマルクスに寄せて書評が始まっているところはなんとも大時代的で、ずっこけます(笑
気づけば7月。本書『自己と他者』を第3巻に収めるシリーズ「知の生態学の冒険 J・J・ギブソンの継承」ですが、ついに最終巻の第9巻『アフォーダンス:そのルーツと最前線』が来月下旬には刊行されます。お楽しみに。




